殺し屋の受難

そらいろ

第1話 路地裏

 振り返ると、それはあった。

 銃口。


「え」


 漏れた声はそれだけ。

 ギラリと輝いたそれは無慈悲にも火を噴いて、少女の頭蓋を打ち抜いた。


――バァン


 痛い。ドサ、と身体が地面に転がる。目前の男が銃を弄んでいるのが見えた。


「さて、と。呆気なかったな。でもこれで今日は肉が食えそうだ」

 うーん、と男が伸びをする。仕事なのだろう。となると殺し屋さんかしら。

 殺されるのは、困るなぁ。というかそんな簡単に死ねたらいいんでしょうけど。

さてと、流石に起きるかなぁ。サイセイっと。

 コポコポ、と泡が立つ。粉砕された頭蓋骨がゆっくりと元に戻っていく。幸いにも弾丸はきれいに貫通したみたいだから、脳みそも適当に再生しておけばよし、と。


「イタイナァ」


 おっと、変な声になっちゃった。

 目の前の殺し屋さん? は声も出せないみたいで、目を白黒させている。

 ワタシはよいしょ、と立ち上がって、腰を抜かした殺し屋さんを見下ろした。


「嘘だ、確かに、殺して」

「うん。殺されタね、ワタシ」


 秘密を知った人間を生かしておくワケにはいかないよね。

「うん。殺すかな」


 ガタガタ震えだす殺し屋さん。彼がさっき放り出した拳銃をワタシは無造作にひろった。ガチャガチャと音を立てながら、セーフティを外す。銃弾もまだ残っているみたい。ちょうど良いね。

 殺し屋さんのこめかみに銃口をゆっくりと押し当てて、


――バン


引き金を引いた。銃弾は後ろの壁にめり込んだみたい。くぐもった音がした。

 ちゃんと殺せたかな。起き上がって来ないのを確認したら、適当な大きさに刻んで、それから。アあ、こんなところに、ちょうど良くゴミ袋があるじゃない。これに詰め込んで、と。あとはカラスが何とかしてくれるでしょ。


 ぱんぱん、と服についた土をはらって立ち上がる。


「早めに顔を洗わないとなぁ」

 とつぶやきを漏らして、××××は路地裏から立ち去った。


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