最終話 不可解な日常
酔った状態で苺苺の家まで向かうと彼女は酔い醒ましのために水のペットボトルを渡してくる。
「大丈夫ですか?飲み過ぎちゃいました?」
それに軽く頷くとリビングのソファに身体を任せて脱力していた。
そんな僕に苺苺は苦笑を浮かべると対面のソファに腰掛けた。
僕のことをまじまじと見つめている苺苺は顔の輪郭に手を置いて膝に肘を置いていた。
しばらく僕のことを見つめていた苺苺は唐突に口を開く。
「神威さん。私のこと覚えていませんか?」
「え…?何のこと?」
「神狩神威先輩ですよね。私を覚えてないんですか?」
「全く覚えてないけど…君は誰?」
僕の質問に彼女は明らかに嘆息してみせると仕方無さそうに口を開く。
「
その名前を耳にして僕は彼女の正体に辿り着く。
あのしつこくつきまとってきた面倒な後輩。
それが目の前にいる相手だと思うと僕の背中には嫌な汗が流れる。
「そうか。久しぶりだね。懐かしい話をする前にお手洗いを貸して欲しい」
「どうぞ。扉出て右側です」
「ありがとう」
リビングを離れるとトイレに入り用を足す。
忍び足でトイレを出ると一条舞はリビングのソファで僕を待っていた。
ただ僕は彼女の本質を理解しているため逃げるように玄関の外に出る。
いいや、本当に逃げたのだ。
メンヘラストーカー気質な彼女が怖くて僕はその場から逃げる。
スマホに通知が届いて、それを確認すると一条舞は諦めるようなメッセージを送ってくる。
「やっぱり私じゃダメでしたね。正体を明かさなければ良かったです。これで本当にさようならですね」
その通知に返事もせずに帰路に就くのであった。
自宅のマンションの入口まで辿り着くとそこには福喜多睦心が立ち尽くしていた。
「遅かったじゃない。大丈夫だったの?」
「うん。ってかどうした?」
「心配だったから。帰ってくるまでここで待機していようと思って…」
「なんだ…中入るか?」
「良いの?」
「もちろん」
「じゃあお邪魔します」
そのまま福喜多を家に招くと本日の出来事を言って聞かせる。
「だから言ったでしょ?危なかったじゃない」
「なにかされたわけじゃないけど…」
「されてからじゃ遅いんだから」
「じゃあ何もされなくて良かったよ」
「もっと注意しないとダメだよ」
「そうだね。色々ありがとう」
「いえいえ。どういたしまして」
僕と福喜多は会話を止めると見つめ合った状態で数秒間止まっていた。
何故だかわからないのだが僕らはそのまま吸い込まれるように抱き合ってキスをする。
二人してベッドに潜り込むとお互いを求め合うのであった。
「もう他の人に目移りしないで?」
それに頷いた僕を福喜多は優しく撫でる。
「ずっと二人きりだからね…」
福喜多の胸に抱きしめられながら僕は静かに安らかに眠りにつくのであった。
僕の身に起きた不可解な数日間の出来事。
それを全て押しのけたところでやっと気付いた運命の相手。
そんな僕の不可解なラブコメの日々だった。
完
地元掲示板の書き込みから始まった僕らの不可解なラブコメ ALC @AliceCarp
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