第3話正常に思考が回らない

午後過ぎに目を覚ますと本日は苺苺とのデートの日であった。

身支度を整えながら何気なしにスマホを手にすると福喜多から通知が届いている。

「今日デートなんでしょ?悪いこと言わないから…家に行くようなことは避けるんだよ?」

心配性な福喜多は未だに苺苺のことを疑っているようだった。

「わかった。一応心に留めておく」

「一応じゃなくて!ちゃんと覚えておいて?」

「わかった」

そこまでやり取りを繰り返すと適当なスタンプを押して会話を終了させた。

身支度が整うとまだ約束の時間まで大分暇があったのでサブスクの動画配信サービスを利用して映画を眺めていた。

二時間程度の映画をぼぉっと眺めているとスマホに通知が届く。

「起きていますか?」

苺苺からの通知を目にすると直ぐに返事を送った。

「起きているよ。今は家で映画観てるところ」

「そうですか。気が急いちゃって…早く会いたいです…」

「そうなの?じゃあこれから駅まで向かおうか?」

「はい…実は…私はもう駅にいまして…」

「そうなの?それならもっと早く言ってよ。すぐに向かうね」

「ありがとうございます」

やり取りを終えると家を出て駅まで直行するのであった。


駅のターミナルで苺苺は僕を待っていた。

「おまたせ。何処行こうか?」

「夕食までカラオケとかどうですか?」

苺苺の言葉を耳にして先日、福喜多に言われた言葉を思い出していた。

「密室とかで二人きりにならないほうが良いと思うよ。いつでも他人の目があるところにいたほうが安全だから…」

心配性な福喜多の言葉が脳裏をよぎって僕は苺苺の提案に首を傾げた。

「ゲームセンターとかのほうが良いかな…」

「良いですね。ぬいぐるみでも乱獲しましょう」

「じゃあ行こっか」

どうにか苺苺の提案を避けることが出来るとその足でゲームセンターへと向かうのであった。


ゲームセンターのクレーンゲームで数千円を消費して多くのぬいぐるみをゲットするとその全てを苺苺にプレゼントする。

「くれるんですか!?本当に良いんですか!?もう返しませんよ!?」

苺苺は大げさなほどに喜んで見せると大事そうに僕が渡したぬいぐるみたちを抱きしめていた。

「大事にしてね」

適当に思える言葉を口にすると彼女は満面の笑みを浮かべて頷いた。

時刻が十八時を過ぎると僕らは予約していたレストランへと向かう。

食事とお酒を楽しんで本日はお開きといったところで待っていたように苺苺は口を開く。

「家に来ませんか…?」

少しだけ伺うような彼女の態度に僕は少しだけ心を動かされる。

どうしようかと考えるのだが…。

アルコールが回って正常に思考が追いつかないでいると彼女は僕の手を引いた。

そのまま流されるような形で苺苺の家へと行くことになるのであった。


次回。

苺苺の家…

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