第2話同僚からの注意勧告
「つまり…それって無料の出会い系ってこと?」
会社の同僚である
「違うでしょ。相手だってただ友達が欲しかっただけじゃないかな」
休憩室で缶コーヒー片手に言葉を返すのだが彼女は必死で首を左右に振る。
「そんなわけ無いでしょ。絶対に出会い目的だって」
「そうだったとしても彼女は普通の人だったし。怪しいところは何処にもなかったよ?」
「本当に?ちゃんと思い出してみなよ。何か怪しいところあったんじゃない?」
「怪しいって言うか…」
そこで言い淀む僕の姿を確認した彼女は、
「やっぱりあるんじゃない…」
などと言って苦笑してみせた。
「まぁ。数回のチャットですぐに会う事になったんだよね…。そこだけは少しだけ怪しいって思わなくもないよ」
「チャットだけで会おうってなる時点で怪しいじゃない」
「そんなこと無いだろ。例えば有料のマッチングアプリだって数回のチャットのやり取りで会おうってなる人も居るはずだし…」
「マッチングアプリは顔写真があるしプロフィールも見れるでしょ?全然違うわよ」
「いやいや。それが事実だなんて保証は何処にもないだろ?」
「そうだけど…そんなこと疑っていたらマッチングアプリなんて使えないじゃない」
「………」
僕と福喜多の平行線なトークは休憩時間中続く。
話がいつまでも横這いで進んでいくことに嫌気が差した僕らは内ポケットからタバコを取り出して火を付けた。
数回吸って脳内のストレスが緩和された様な感覚を覚えると僕は口を開く。
「一応気を付けるけど…何でそんなに福喜多が必死そうなんだよ…」
彼女も同じ様に数回タバコを吸ったあとに青白い煙をふぅと吐き出して仕方無さそうに口を開いた。
「唯一の同期だから…とか色々と理由をつけるのは簡単だけど…。ただ
あまりにも大仰な名前のため芸名やハンドルネームと間違われやすいので本名のまま掲示板に書き込みをしても身バレすることはほぼ無い。
僕を知る人物でないとこの名前に見覚えはきっと無いだろう。
閑話休題。
「わかったよ。気を付ける」
結局話しは福喜多の感情論に流されるような感じで終りを迎えると僕らはデスクへと戻っていくのであった。
帰宅すると苺苺から通知が届いていることに気付く。
「日曜日のことなんですけど…」
その様な通知の始まりで僕は続きを読んでいく。
「食事の後はどうします?もう一軒飲み直しに行きますか?」
「どうだろう。その時の具合によるかもしれない…曖昧な返事で申し訳ない」
「そうですよね。その時にならないとわからないですよね…ただ心に留めておいて欲しいんですが…」
苺苺はそこで一度文章を区切ると追加でメッセージを送ってくる。
「食事が終わったら家に来ませんか?って誘っていることを覚えておいてくださいね。明日も仕事で早いでしょうから…おやすみなさい」
彼女はメッセージを送った後にやり取り終了とでも言うようにスタンプを追加で送ってくる。
僕は福喜多の言葉を耳にしてしまったため多少なりとも疑心暗鬼になりながら、この不可解なモテに頭を捻らせるのであった。
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