ダンジョン・テスト
昔々、アーブローディ東部にラッカークという王国がありました。
王都ラモンの魔法学校は国内外の学生が集まる名門校で、レオンはその中でも
当時のラッカーク王国では、魔法は
そして、魔力が豊富な人間でも1系統の魔法しか使えず、魔法学校ではその精度を上げるのが普通でした。
ですが、レオンは5系統すべてに
ラモン魔法学校の学生は2年目以降、定期
この試験では、学生による4人以内のチームが、地下の訓練
学生によっては踏破に数日かかることから、この訓練施設は“
ダンジョンは基本的に、真っ暗な
魔法学校の学生は貴族の
こんな
「セイラ、今いい?」
3学年
レオンは総合魔法学科、セイラは木魔法学科です。
たまに同じ講義を受けますが、基本的には別行動をしていました。
「学年末の実技試験、一緒に
「でも、他の人たちが……」
「他に組みたい人がいるの?」
セイラは口ごもった後、
「ありがとう、セイラ。今回も君と組めて嬉しいよ」
レオンは
レオン、セイラ、ジェラッド、マリーナの4人は、2学年
ジェラッドは火魔法学科、マリーナは土魔法学科で、レオンほどではないにせよ、2人とも優秀な学生でした。
それに対して、木魔法学科のセイラの成績は
もちろん、4人で初めて
ジェラッドは、
「
マリーナは、
「セイラは
レオンは、
「セイラといると、自分でも予想外なくらい力が
と言ってくれたのです。
当時はセイラもそれをありがたく受け取り、何度も
ですが、それから1年半が
他の人が使えない特殊な魔法を使えるとか、時間をかければ強力な魔法を発動できるとか、魔法薬の
加えて、他の学生たちがレオンたちとチームを組みたがっていることも、セイラには
『何であんなチンチクリンがレオンと……』
『本人は無能なのに、試験で良い点をとるために優等生に付きまとって……
といった
結局、セイラ以外の3人が乗り気でしたし、セイラにも
1ヶ月後、ダンジョン・テストが予定通り実施されました。
チームリーダーのレオンがみんなに声をかけます。
「よし、行こう!」
「おおーっ!」
ダンジョン・テストの基本は、前後左右だけでなく上下にも警戒することです。
色々な方法がありますが、当時、学生の間で最も一般的だったのは、土魔法で
中級魔法なので、土魔術師でも
とはいえ、セイラたちにはレオンが付いています。
「前々から考えてはいたけど、やってみたら意外と出来るものだね」
レオンの言葉を、ジェラッドが手をひらひら振って否定しました。
「
これはすぐ試験
1週間後、『能力は
「ごめん、せっかくの長期
4人で職員室を出た後、レオンが
「俺にはむしろ好都合だ。試験対策ってことで訓練場が使えるんだからな」
「そうね」
マリーナが同意しました。
後方でビクビクしているセイラと
魔法を
「あの……、わたし……」
セイラは
「再試験は1人で受けようと思う」
3人は
「ダンジョンはレオン1人でも
わたしがくっついてても、みんなの足を
みんな
「セイラ……」
レオンが何か言いかけましたが、セイラは
「待って、セイラ!」
すぐに追いつかれ、マリーナに後ろから
4人の中でセイラがいちばん体力がないのですから当然です。
ここで
「セイラ、
正面からセイラの
「俺には君が必要なんだ!」
飽きるほど聞いても、セイラには理解できない台詞でした。
もはや
(こんな天才たちに、わたしみたいな
そんな考えが、セイラの
「レオン、こうなったら……」
ジェラッドの言葉に、レオンは彼を見つめて、
ようやくこの地獄が終わった、とセイラが思っていると、
「これを」
レオンが制服の内ポケットから1枚の紙を取り出し、セイラに渡しました。
他に選択肢がありません。
開けてみると、それは採点
「これは……?」
一瞬、レオンの
彼ほどの大天才が追試を受けたら
「俺が、1年生の中間試験
「え、でも、レオンは実技も
「この後
それ以来、この過去問を
でも、恥ずかしい話、俺はすぐ自分を天才だと
レオンはセイラから目を
「たしかに、魔法の才能には
でも、数学はダメだ。毎日時間をかけて頑張らないと、授業も分からなくなる。計算ミスをすると投げ出したくなる。
そんなとき、セイラ、君が
ダンジョン・テストだってそうだ。正直、セイラがいて気を
今まで
「……レオンは
「とにかく、俺は、君がいないとダメなんだ!
身勝手で、わがままだとは思う。でも、お願いだ、俺の
セイラはレオンたちのチームに戻ることにしました。
それは、レオンも生まれながらに
それからというもの、セイラは自分でも
レオンとセイラは再試験の数週間後に交際を始め、時々ケンカをしながらも、魔法学校卒業と共に結婚し、
<ダンジョン・テスト、完>
【一話完結・短編集】異世界の昔ばなし あじさい @shepherdtaro
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