最終話 今度こそ君と
それから星宮妃咲希とテスト当日までの間、毎日図書室で勉強を見てもらい、コツを教えてもらい。それなりに自身を持てるようになった所で、テスト当日はやってきた。
試験監督の「始め――ッ!」という声と共に開始された高校初の中間テストは、数学、現代文、古典、英語表現、地理、化学、日本史、世界史の順に行われ、瞬く間に四日間が終了した。これはその翌日のこと。
「どうー!? うち学年順50位!」
「オレは130位だぜ?」
「ボクは45位」
「さゆっちは!?」っと美由紀が飛びかかる。
「私は一応、3位だったよ」
「え、やばーッ!!」
進学クラス顔負けの成績に全員が驚いた。
「じゃあ最期に頼人っち、一応順位を聞いとくよ」
「俺は77位だぜ?」
「あの頼人っちが100位以内!? まじで世界終わらないよね……?」
「当然赤点はなし、これで約束はま盛れたな。咲優」
「うん。……良かった」
「それじゃあ咲優、少しだけ今から二人で話せるか? 屋上とかで」
「うん……。分かった」
彼女も薄々気づいていると思うが、俺は絶対に伝えなければならなかった。今の気持ちを、これからの事を。
まるで人の気配がない屋上で、咲優と二人きりなった所で、思いを打ち明けた。
「ごめん、咲優。この二週間俺なりに考えて、考えて、本当に考え抜いたんだ。それだけは分かって欲しい」
「うん! 返事を貰えることが幸せだから、わたしは十分嬉しいよ!」
最後までにっこりと笑ったままなのは彼女らしかった。だからこそ言わない訳にはいかない。俺の正直な気持ちを、
「俺は咲優とは付き合えない。ごめん」
「うんうん、理由ってもしかして好きな人が居るから……とか?」
「あぁ、好きな人がいる。そしてそれを咲優には言わなきゃいけないと思ったんだ」
「うん。言ってごらんよっ」
俺はありのままを彼女に話した。前世での記憶があること、そこで好きになった少女とのこと。星宮妃咲希がその彼女の生まれ変わりだと言うこと。最後まで話し終わった時、咲優は泣いていた。自分のことのように俺の事を心配しているようだった。
「今の話、嘘だと思わないのか?」
「思えないよ。頼人がそんなに真剣な顔で私に話してるのに、嘘なわけない。だから行ってあげて、彼女――星宮さんのところに。気持ちを伝えに」
咲優に一礼をして、俺はただひさすら図書室に走った。テストの結果が全て出た日、図書室で落ち合う事になっているから。そこで気持ちを伝える為に、俺は決意を固めて今日までやってきたから。
いつもはゆっくりと開けるその扉を勢いよく開けた。とにかく気持ちを早く伝えたい。
「星宮……ッ! 居るか!? 居ないのか!?」
「もう、ここにちゃんと居るってば。ほんと君って落ち着きがない子供だね。テストの結果はどうだったの?」
「聞いてくれよ星宮、中学でも100位以内を取った事が無い俺が77位だったんだぜ? 赤点も一つもない。それもこれも全部お前のおかげだよ。まじでありがと……」
「へ〜、君にしては頑張ったじゃん。へへっ、私も頑張った甲斐があって良かった」
「星宮は……その、何位だったんだ?」
八枚の解答用紙を俺に見せて、彼女はにっこりと笑う。その全てに100点と書かれているということは、
「1位だったよ、ちゃんとね?」
「どんなけ怪物なんだよ、お前は」
テスト週間の殆どを俺の勉強に付き合っていたというのに、彼女の結果は入学試験と変わらず1位、それはもはや天才を超えた怪物の偉業だった。
「なぁ星宮、俺この二週間お前と過ごして、確信した事があるんだ。お前――俺と会うのはここが初めてじゃないだろ?」
「……それはつまり、小さい頃にも君と会っていたってことかな?」
「違う。とぼけんな。小さい頃なんかじゃなくて、もっと、もっと前の世界でだよ」
星宮は俺に背を向けて、涙を拭く。
昔からそうだった、強く気高き彼女が涙を零す時は、いつも顔を隠して強がる。決して正面から泣き顔を見た事がなかった。
「そうやって泣き顔を見せない所も、本当にお前らしいよ、シャル。いつから気づいてたんだ?」
「そんなの……そんなの食堂で初めて顔を合わせた時からに決まってるでしょッ! 私が君を見間違えるわけない!」
滝のような涙を流しながら、彼女は振り返る。
「ねぇ……今度こそ私のこと、ずっと幸せに出来るのっ?」
精一杯の笑顔を浮かべ、俺は応える。
「あぁ、今度こそ約束するよ。永遠に誓って君を幸せにすると――」
これは、いつかの世界で魔王だった俺と、勇者だった君との物語。
かつて世界に否定された二人の関係。今度こそ俺達は結ばれる事が出来るのだろうか。
いいや、必ず結ばれてみせる。
魔王でありながら勇者との恋が発覚して公開処刑された俺。転生して春から高校生だけど、学年一の金髪美少女が絶対“アイツ”の生まれ変わりな件 はめつ @Limrim
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