第37話 エル

  かわいい! でも、誰!? どこからやって来たの?

「エル! まだ寝とけよ。ジャマすんな」

 アインは女の子のほっぺたを両手でむにーっと引っぱった。

「だって、もうあさだもん! あさはエルのじかんだもん!」

 エルと呼ばれた女の子は、アインにほっぺを引っぱられながら、真っ赤になって怒っている。

 あれ? エルって、まさか。

 ニカは、大きな深緑色の目をエルのほうに向けた。

 エルの背中には、小さな水色の羽が生えている。

「わぁー、エリシュだ。エリシュ、また会えたねぇ」

 ふふふっ、と、うれしそうにニカにほほえみかけるエル。

 エルのブラウスのリボンには、銀色の鈴がついている。

「アイン、この子って――」

「お察しのとおりだ。こいつも憑りついてるんだよ。オレに」

 えっ!? 魔物だけじゃなくて、天使もアインのそばにいるの?

「とりついてなんかないもん! おねぇちゃんさがしてほしいんだもん!」

 エルはアインをポカポカと容赦なく小さなグーでたたき続ける。

「いてててて。分かったからもうやめろ、この小鬼め」

 アインは、ふーっ、と大きなため息をついて。

「こいつの姉が、この世界のどこかにいるっていうんだ。人間に生まれ変わって」

 アヌーク・ディンが……!?

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シヲマネキ・キネオラマ 香秋 ちひろ @quemukosan

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