茂みの中から現れたのは
「お、女の子っ!?」
いきなり茂みから飛び出してきた女の子。
その予想外の展開に、俺は思わず大きな声を上げてしまう。
その声に気付いたようにこちらを見た女の子は、一瞬だけ驚いた表情を浮かべた後で慌てた様子で声を掛けてくる。
「なんで、こんな所に他の人がっ!? と、ともかく危ないから今すぐ逃げて!」
大声で叫んだ女の子の背後で再び茂みが揺れ、彼女を追うようにしてなにかが飛び出してくる。
「ギャキャアッ!!」
「やだっ!? 追い付かれた!?」
飛び出してきたそれは、アニメやマンガでよく見るような、緑色の肌をした二匹の
その醜悪すぎる見た目に思わず顔をしかめていると、俺の姿に気付いたゴブリンたちは威嚇するように手に持った武器を振り上げる。
生まれて初めて向けられた、純粋な殺意。
そのあまりの圧力に、俺は思わず固まってしまう。
それでも無理やり身体を動かすことができたのは、背後に居る女の子のおかげだろう。
再び槍を構えると、震える足を必死に抑えながらゴブリンと相対する。
そのまましばらく睨みあった後、先に動いたのはゴブリンの方。
いきなり走り出したゴブリンは手に持った武器を振り下ろし、俺はそれを槍の柄でかろうじて受け止める。
衝撃で痺れる手に力を込めながら槍を振ってゴブリンを払いのけると、そのゴブリンに向けて槍を突き出す。
勢いよく突き出された槍は、意外なほどまっすぐにゴブリンへと向かっていく。
その穂先は吸い込まれるようにゴブリンの腹に突き刺さると、一気にその身体を貫いた。
「ギャアァァッ!?」
断末魔の悲鳴とともにゴブリンが絶命し、初めて自分の手で生き物を殺した実感に俺は思わず槍を手放してしまう。
呆然と震える手を見つめる俺に対して、仲間を殺されたもう一匹のゴブリンが怒りを露にする。
丸腰の俺に向かって突進してきたゴブリンは、手に持った棍棒をデタラメに振り回す。
「うわっ、危なっ!?」
とっさにその場から飛び退いて避けようとしたものの、完全には避けきれず棍棒の先端が俺の左腕を強く打つ。
「ぐっ!? 痛ってぇぇっ!!」
衝撃ではね飛ばされるように地面を転がった俺は、あまりの痛みに大声で叫んでしまう。
殴られた腕はジンジンと痛むが、そうも言っていられない。
すでにゴブリンは追撃のために突進してきていて、俺は今度こそ全力でそれを回避する。
ゴロゴロと地面を転がるようにして飛び退けば、空を切った棍棒はさっきまで俺の居た場所の地面にめり込む。
「くそっ! とりあえず、なにか武器を……」
素手で勝てるビジョンが見えず、ともかくなにか武器をクラフトしようと材料を探す。
そのために視線を外した一瞬の隙をつくように、ゴブリンは再び俺に向かって突進してくる。
「しまっ……!?」
反応する暇もないくらい一気に距離を詰められて、俺の眼前にゴブリンの棍棒が迫る。
死を覚悟した俺がギュッとまぶたを閉じるとと、離れた所から叫ぶような声が聞こえてきた。
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