日本人は政治音痴(下)
さて次は、ODAですね。
謂わゆる、海外へのばら撒きなどというとんでもなく稚拙な批判をよく見かけませんか?
まずODAとは一体何なのかというと、先進国による発展途上国の社会や経済開発に対する援助のことを指します。
ざっくりいうと、途上国が自国だけで解決出来ないことに対して先進国が資金、技術、人の支援を行うことで、世界全体の底上げを図る目的(勿論、人道的にも大事です)で行なっていることです。
ここまでの説明でまともな人ならば大概黙るとは思いますが、他国より自国だとか、援助し過ぎだとかいう身勝手な人は一定数いるかと思います。
他国より自国という意見は、一見するとまともなことを言っているかのように見えますが、個人的には政治的な言動としては最低の部類に入ると思っています。
政治において、行わなければいけない政策だろうと、そこに優先順位をつけることは当然のことだと思います。
しかしそれは、0か100かではなく、一番目に行うか二番目に行うか、でなくてはいけません。
やらなければいけないことは、やらなければいけないことなのです(進次郎構文)。
そして、援助し過ぎという意見は単純に的外れです。
実は国連が各国のODA供与の目標に関して「GNI比0.7%」という数値を示しています。
この場合のGNI比とは、国の経済規模に対してどのくらいの割合をODAとして供与しているかを指していますが、2022年度の日本のGNI比は0.39%でDAC(開発援助委員会、29カ国とEU)30ヶ国中14位でしかありません。
どこが「援助し過ぎ」なのでしょうか?
◇◆◇
最後に国防と集団的自衛権についてです。
様々な政策のなかでも欠かせない最も大事なことは二つあり、それは経済政策と国防政策になります。
優秀な政治家、政党としての評価は、この両輪のバランスをうまく取れるかで決まってくるといっても過言ではないと思います。
それぞれ決して欠かすことが出来ない重要な要素ではありますが、残念ながら両立するのはとても難しいことでもあります。
そこで現在の目安となっているのが、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国の目標値でもある国防費のGDP比2%の値です。
日本でも度々話題に上がってはいますが、実際の防衛力強化による軍事的即応性の確保のためと国内外に向けた政治的意思の明示を目的としています。
NATOと日本は、共通の利益に基づいて協力する「パートナー国」という位置付けでもあり、対中国、ロシア、北朝鮮など、日本の厳しい安全保障環境に対処するためにも、ある程度足並みを揃える必要もあるためNATOの数値目標を念頭に置いて決定しています。
そして、防衛とは切り離せないことの一つとして、集団的自衛権の問題もあります。
とんでもない話ではありますが、日本では集団的自衛権というと他国の戦争に巻き込まれるなどという、テロ国家の支援者かのような言説が公然と流布され、あろうことか大規模なデモまで起きています。
何故テロ国家の支援者かのようなと、例えたかと言うと、世界中の普通の国々(テロ国家や領土拡張路線国以外の国)にとって集団的自衛権とは、強大な軍事力(テロ行為も含む)を振りかざして他国に譲歩を迫るような国に対して、軍事力が弱い国でも複数の国で団結することで自国や友好国を守ることが出来る「当然の権利」なのです。
さて、そんな世界中の普通の国の人々が、当然の権利である集団的自衛権を認めずにデモまで起こっているような国を見た時、どう思うのでしょうか?
「世界中で主流である」ということが何を意味するのか、ここまで付き合って頂けた方には分かって頂けたかと思います。
何処の誰に何を思われようとも、これだけは貫く必要がある、なんてことも世の中にはあります。
しかしながら、今の日本人には世界からどう見られているのかという視点自体が致命的に欠けてはいないでしょうか。
世界を無視して貫き通した結果、日本から企業が離れ、発展したかつての途上国に見限られ、他国に軍事力を盾に脅されても何処の国も味方してくれない、なんてことにだけは、なって欲しくはないと切々と思う次第です。
視点論 坂条 伸 @PotQue
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