第3話
『無知系少女が世界を知るシチュエーション』
「先生、これはなんですか」
「これは酢豚だよ」
「酢豚はなにに使うものでしょうか」
「食べるんだよ」
「なぜ食べるのでしょうか」
「さぁ、美味しいからじゃない?」
「酢豚は『おいしい』ですか」
「好き嫌いはあるかもしれないけどね」
『実食編』
「酸味を感じます、『甘い』もあるかもしれません」
「そっか」
「よく噛まないと飲み込めません」
「あんまり無理して飲み込もうとしちゃダメだよ?」
「はい。先生、これは『おいしい』ですか?」
「……大事なのは、君がどう思ったか、だよ」
「わかりません」
「今はまだわからないかもしれないけど、大丈夫。君ならきっとわかる日が来るよ」
「それはいつでしょうか?」
「……急いてはことを仕損じる、その時になればわかるさ」
『問題発生』
「先生、酢豚にはなぜパイナップルが入っているのですか」
「僕が入れたからだよ」
「……そういう意味ではないです」
「じゃあ、そういう料理だからと言い換えてもいい」
「でも、モニターの酢豚にはパイナップルが入っていませんでした」
「まぁ、そういう食べ方をする人もいるね」
「私はそちらの食べ方を所望します」
「そりゃまた、なんで?」
「パイナップルは酢豚に合いません」
「そりゃ大変なことだ、きっと君は舌を悪くしてしまったんだろう」
「!?……どうすれば、治るのでしょうか?」
「毎日、パイナップルの入った酢豚を食べていれば治るよ」
「でも、私はそれを食べたくないのです」
「好き嫌いで偏食するのは体に悪いよ」
「体に悪くても、いやなのです」
「そりゃ困ったな」
(なお、酢豚なのは「何でもよかったけど酢豚というのが単に愉快だった」から)
『バトルシーン』
牧 勇太郎は石を眼前に掲げて宣言する。
「お前じゃ俺に敵わない、だから俺が勝つ!」
次の瞬間、牧は腕を大きく振りかぶる。腕が大きくしなって石を撃ち出す。
狙う先は向井のこめかみ。人体の急所、当たれば脳震盪は免れない。そこに牧お得意の回転と
路上で拾った名もない石ころが殺人魔球へと早変わりして向井を追尾する。幸い石ころをその抜群の動体視力で追っていた向井は、反射的に腕を突き出して頭を守る。
キィン、と耳障りな金属音が響いて、小柄な向井の体が縦に吹っ飛ぶ。
カーブボール、ストライク!
決まった。牧は勝利を確信する。
でも、念のためあと三個投げておくか。そう思ってしゃがんだ牧の頭蓋に、
どごんっ!
いやに重い肘鉄が突き刺さった。
ベキドゴッと牧の頭蓋から人体から鳴っちゃいけないような音が鳴った。
マジかよやばいやばいどうなってる!?牧はぐらつく脳をなんとか叩き起こして振り向く。
そこには無傷の向井が立っている。
「なん、で……?」
「いてぇんだよクソバカ」
向井が呟く。
あれか?最近流行りの衝撃貫通系か?しかしそれにしたって弱いな。……ってことはあれかね、改造して連射いじった
「お、れの術式に不備はなかっ…た」
「…ん、あぁそうだな。お前に不備は無い」
単に俺が強かっただけだと向井は笑う。
事実、
短編にすらならない。 白雪工房 @yukiyukitsukumo
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