第3話 夢2

夢を見るようになってから3週間ほど経ち、人を助け夢から覚めるというロールプレイを楽しむようになった。

一連の決まった動作をすれば夢からは解放されるし、感謝されることはまだ小恥ずかしいが悪くないと思い始めたからだ。

それに普段からゲームをプレイすることも相まって、どうすれば相手が喜ぶのか、感謝の言葉を引き出せるのかを考えるある種、攻略とも言える行為が楽しくなっていた。

同じ相手は2度と出ないし、攻略難度もじわじわと上がっていたことがハマることに拍車をかけたこともあっただろう。

最初こそ言葉をかければ終わっていた夢も、最近では何回かのやり取りが必要なこともしばしばで、相手が不機嫌な状態からスタートすることもあったし、進行していく中で暴言を吐かれたこともあった。

むっとし、手を出そうとしたこともあった。しかし、体は動かず何もできなかった。仕方がないから攻略を進めたが、ああいう人物にはなりたくないなと思った。


そんな夢の攻略生活が始まってから半年ほどが経ったある日のことだった。夢を攻略し夢から覚めて見慣れた白い天井を認識しても、体が動かなかった。

声も出ない。

なんだ?なにかの病気にでもなったのか?

困惑していると目の前に突然文字が現れた。

まるでゲームのコマンドのように、文字だけが浮かんでいる。

機械音声がそれを読み上げ、無機質な部屋に響き渡る。


「おめでとうございます。あなたは無事、更生シナリオを達成いたしました。

シナリオが終了したため現在の空間から離脱します。データセーブ中......」


は?

声が出ないから最大限の反抗として目を最大限に開こうとするが、どこにも力が入らない。

何を言っているのかわからない。シナリオが終了?現在から離脱?

瞬きすらできないままに音が続く。


「セーブが完了しました。離脱します。」


感情のない音がやむと同時に、急に視界がぼやけだした。


あれ?これは、ゆめと、おな、じ?

白い天井がだんだんと黒い闇の中に沈んでいく。

世界がすべて黒くなり、何も見えない。


そうだ、おれは……

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正夢 足袋抜 オクナ @fu-sen

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