Episode.14-2『残されたモノと破滅の弾丸』
ゆっくりと目を開けるとナイフが当たる寸前で兵士は固まっていて、すべての兵士は動いていなかった――――――。
「――――――!?」
刺された痛みがない――――――?
『こっちは二人よ。』
ルルがいる方向を見ると、セリカの左手にはナイフが握られていてナイフはルルの背中を刺していた。
何かが刺さる音はセリカがルルにナイフを刺した音だったようだ。
セリカのナイフから流れるようにポタポタと血が滴り、地面に落ちている。
『あはは………そんなんじゃ私の家族は奪えないよ…!!』
固まっていた兵士が一斉にセリカの方向に体が向いた――――――。
「セリカ――――――!!」
『わかってるわよ――――――!!』
刺されていたルルは無理やり抜け出してセリカから距離を取り、倒れている2体の兵士は両手で這いずりながらも動き、残りの7体はセリカの方に向かって走り始めた。
『これを使って――――――!!』
セリカがこちらにハンドグレネードランチャーを投げてきた。
グレネード弾を1発だけ装填することができる小型の銃だ。
一斉に襲われていた時に拾ったのだろう。
リボルバーを左のホルスターに入れて、回転しながら目の前に滑り落ちたハンドグレネードランチャーを急いで拾い上げてルルの足元に構えた。
「これでどうだッ――――――!!」
ハンドグレネードランチャーのトリガーを引いて、撃つとグレネード弾が飛んでいき、ルルは避けようとするも足元に着弾して、爆風でルルの両足は血を流しながら吹き飛んでいき、両足を失って軍用車のところまで吹き飛んだ。
ルルの力が失われて兵士たちも崩れるように倒れて動かなくなり、もう抵抗はできないだろう。
「………車に戻ろう。」
『いか………せない…。』
振り返り車の方に数歩踏み出したところで、こちらには音が聞こえなかったがセリカは何かの音を感じ取っていた。
『何の音――――――?』
「ん………?」
ルルの方を見ると這いずり爆弾の起爆装置を押していた。
時限式のプラスチック爆弾のようで爆発する時間が表示されている。
残りは………………3秒だ――――――――――――――――。
「まずい――――――!!」
セリカはプラスチック爆弾のことを知らなさそうだ。
このままだとセリカ、そして橋が爆発で吹き飛ぶかもしれない。
ハンドグレネードランチャーを投げ捨てて無意識のうちに俺はセリカがいる方向に全力で走っていた。
間に合わない――――――――――――――。
「セリカぁぁァ――――――!!」
2――――――――――――――――――――――――。
だが――――――。
「もう二度とッ――――――――!!」
全力でセリカの方向に走った。
1――――――――――――――――――――――――。
「失わせないッ―――――――――――!!」
『え、ちょ――――――なんなのよ!?』
プラスチック爆弾を抱えているルルを通り越してセリカの所まで走り続けた。
0――――――――――――――――――――――――。
1歩後ろに引きずったセリカの所に全力で走り込んだ勢いのまま飛び込んだ瞬間、大きな爆発音と共に爆風が起き、セリカを抱えたまま爆風で地面を回転しながら転がり、背中から廃車に向かってゴンッ――――――と大きな衝突音と共に激突した――――――。
爆発で橋が徐々に崩れて海の中にコンクリートや鉄骨などが落ちていく音がしている。
爆風で吹き飛んだおかげか崩落した場所から落ちずには済み、セリカも無事で自身の体は多少痛む程度でどこにも問題はなさそうだ。
『ばっッかじゃないの――――――!?』
セリカに突き放され、爆発した場所を見ると橋は20mほどの崩落が起きていて戻ることはできなさそうだ。
爆発はそれほど強くなかったものの、ここまで崩れたのは橋が劣化している為だろう。
それにこちら側まで走ってこれなければセリカと分断されていた――――――。
「………すまない。」
セリカはこちらに背を向けて俯くと小さく呟いた。
『なんでそんな危なっかしい庇い方したのよ………。』
「死ぬんじゃないかと思って…。」
『…別に逃げろって言われたら避けれたのに。』
セリカが持ち合わせている足の速さならば簡単に避けられる。
そして、こちら側にセリカが逃げていれば車に戻り別のルートからも行くことも可能だったかもしれない。
「そう…だよな。 気が動転していたのかもしれない。」
ゆっくりと立ち上がるとセリカは呆れた声で喋り出した。
『はぁ………ほんと、あんた頭おかしんじゃないの?』
「普通の思考ではないだろうな…。」
『それにあのぐらいの距離なら走って飛べるわ。』
「…セリカは走るのが得意なのか?」
『車よりも早く走れるけどあまり持たないわ。 1分も走れないわよ。』
「そうなのか。」
『………まぁもういいわ。 車に戻れそうにないし、このまま歩いて行くわよ。』
「ああ…。」
リボルバーのシリンダーを外して弾薬ポーチから赤の弾薬シリンダー取り出してリボルバーに装填して歩き始め、廃車が左右に押し寄せられている橋をセリカと歩き続けて抜けると左側には要塞都市E区域が見えて全区域より一番大きく、高さは30~40mの外壁は鉄と石材で乱雑に分厚く固められている。
正面に1つのみの入り口は高さ20mの幅10mほどで巨大な左右にスライド開閉式扉と左右に監視塔が2つ。
右側の巨大な円形の赤黒く光る空間は瓦礫やコンテナが無数に浮いている。
赤黒く光る空間、異界のゲート付近には小さく見えるが大量の魔物がいて近づくのは自殺行為だろう。
「あれがE区域………。」
『正直こんなところ二度と来たくなかったわ…。』
近づくにつれて心がざわついてくる――――――。
セリカがとても嫌気を差しているのがわかるが自分自身もそうだった。
E区域の中はどうなっているかはわからないがE区域に向かい歩きながら見ていると怒りと殺意が加速し続け、歩み続けて行くと感情が煮えたぎるように複雑に湧いて出てくる。
E区域の監視塔から見えない位置まで移動してE区域から少し離れた場所に到着して歩みを止めた。
収まらない感情が声と共に零れ落ちる――――――。
「中になにがある………!!!」
凄まじい怒りと殺意の感情に駆られながら出した声にセリカは何かを感じ取ったのかE区域の詳細を一切語らなかったセリカが答えた。
『……………災いの子を奴隷、実験、おもちゃにしてるわ。』
「そうか…本当の答えがここに………だがッ!!」
ゆっくりと弾薬ポーチから魔力融合結晶を取り出した。
『ちょ、ちょっと何する気よ――――――!?』
魔力融合結晶をリボルバーの先端に装着して、両手でリボルバーを持ってE区域の正面入り口に構えるとセリカはコートを掴み、引っ張って止めようとしてくるが感情による行動が抑えられない。
『ちょっと待ちなさいッ!! 罪のない災いの子もいるのよッ?!』
魔力融合結晶を装着したリボルバーは金色に輝き始めてシリンダーと弾丸も金色に変わっていく。
セリカの言うことを何も聞かずにリボルバーをE区域入り口に狙いを定めているとセリカは怒り始めた。
『聞いてるのッ?! 人間ッ――――――!!』
「悪い………答えはこの後だッ――――――――――!!!」
セリカの言葉は自分には届かず、ただひたすらに破壊衝動と感情が自身を動かし、脳裏に浮かぶ言葉と共にリボルバーのトリガーに人差し指を少しずつかけていく。
何も成せなかった――――――――――。
だけど――――――――――――。
今度は俺が壊す番だ――――――――――――――――!!
トリガーが完全に引かれて、ハンマーがカチャと音を立ててリボルバーから弾丸が発射された。
発射時に反動で腕が頭上まで上がり、凄まじい爆発音と衝撃波は周りに強風を与えてセリカが吹き飛びそうになるがこちらの体にしがみつき耐えるも、後ろには反動による衝撃波と強い風圧が流れ込み、軽い瓦礫物は吹き飛ばして螺旋の衝撃波を描きながら黄金の弾丸は地面を裂きながらE区域に向かって飛んでいく。
黄金の弾丸が通っていく道は徐々に幅20mほどまで吹き飛ばしていき、E区域に差し掛かると20mの幅10mほどの巨大な左右にスライド開閉式扉と左右にある2つ監視塔は容易く破壊されて粉々に崩壊し、弾丸は一気にE区域をえぐりながら中央部分全体を貫通して弾丸は奥の何もない海で、白い閃光を放ち、きのこ雲の火煙が起きて大爆発を起こした。
大爆発の影響で遅れて土煙と共に爆風による強風が流れ込んで来る。
セリカは再び強くこちらにしがみついて来るが自身は左腕で顔を覆い、強く足に力をいれて踏みとどまった。
少しすると爆風による強風が止んで、ゆっくりと左腕を下ろすと中央部分がえぐれて崩壊し、中があらわとなって変わり果てたE区域が見える。
しがみついていたセリカはこちらから離れると立ち尽くしたまま唖然としていた。
E区域で爆発していたらE区域全体すべて吹き飛ばして巻き込まれていただろ
う――――――。
沈黙が中で音を立てて一歩踏み出し、歩み始める。
E区域の中へ――――――――――――――。
『To be continued――』
Catastrophe やみうさぎ @YamiUsagi
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