Episode.14-1『残されたモノと破滅の弾丸』

 『Episode14.残されたモノと破滅の弾丸』





 運転を続けていると橋が見え始めるが橋は大分錆びていて、所々劣化でひび割れている部分や右側、左側に崩れている箇所などもあり、全体的にぼろぼろで強い衝撃が加われば今にも崩れてしまいそうだ。

 橋の下は海で落ちれば簡単には戻れないだろう。


 右側には円形状のえぐれた赤い空間があり、瓦礫やコンクリート、コンテナや鉄骨などが浮いている異界のゲートが見える。


 魔物から逃れて落ち着き始めたころセリカは声をかけてきた。




 『ハンドガン貸して。』


 「ん…? わかった。」




 右のホルスターからハンドガンを取り出してセリカに渡すとセリカはマガジンリリースボタンを押してマガジンを取り出し、新しいマガジンをハンドガンに装填してこちらに渡して来た。




 『はい、これ。』


 「ああ…すまない。」


 『別にこれぐらい、いいわよ。』




 右のホルスターにハンドガンを収納してバックミラー越しにセリカを見るとセリカはこちらをジーっと見ていたがすぐにこちらから目を逸らした。




 『な、なによ………。』


 「なにもいってないぞ。」


 『うっ……………。 本当にあんたといると嫌になるわ…。』


 「そうか…嫌いなのは別に構わないが………。」


 『そ、そういうわけじゃ…あああもう、なんでもないわ! さっさと終わらせて帰るわよ!』


 「ふっ…そうだな。」




 橋の中央付近からは黒い煙幕が上がっている。

 何かが燃えたのだろうか。


 そのまま橋を15分ほど渡ると橋の中間地点にたどり着き、中間地点の先をよく見ると小さな災いの子の後ろ姿が見えた。

 140㎝ぐらいの災いの子は薄紫色のショートヘアにたれ猫耳で、鮮明な血が付いた大きい白いTシャツを着ている。

 災いの子の付近には炎上して燃え上っている軍用車が左に1台、右に2台あり、兵士が9人ほど血を流して倒れていた。

 兵士は動く気配はなく、恐らく全員死んでいるだろう。

 周りには1発式のハンドグレネードランチャーやアサルトライフル、プラスチック爆弾などが散らばっていて軍用車に乗せていた武器などの物資が散乱している。




 「あの子は…? 何かあったのか?」


 『…気を付けて。 様子がおかしいわ。』


 「わかった。」




 災いの子が立っている手前で車を止めて運転席から降り、左のホルスターからリボルバーを取り出して数歩近づくとこちらに振り返り、大きな白いTシャツには鮮明な血がたくさんついていて、黒紫色の生気のない目で表情を変えずに喋り始めた。




 『パパとママはどこ………? ねえ…教えてよ…。』


 「大丈夫か…?」


 『ちょっと! 下手に近づかないほうがいいわ!!』


 「この中にはいないのか?」


 『パパとママ、燃やされて殺されたの。 あはは…。』


 「ッ――――――――!!」



 災いの子の口は大きく笑い、表情は狂気を出し始めた。



 『私の…ルル・トラジディーの家族になって教えてよ――――――!! あははは!!』


 『下がって――――――!!』




 倒れていた兵士がナイフを取り出してこちらに襲い掛かってきた――――。

 兵士のナイフに切られそうになるがセリカにコートを引っ張られて釣られるように後ろに体が下がるも距離が足りず、リボルバーでナイフを防ぐと火花を散らせながらリボルバーは弾き飛ばされて、たれ猫耳の災いの子、ルルの方向にリボルバーは回転しながら滑り落ちた。


 セリカに引っ張られていなかったら防ぐこともできずに致命傷を負うほど切られていた――――――――。

 周りの兵士は操られるように動いていてゾンビに似ている。




 『みんな私の家族――――――!!』


 『ぼさっとしてないで!!』


 「ああ…!!」




 右のホルスターからハンドガンを取り出して敵対してきた災いの子、ルルに向けて構えると同じくセリカも右のホルスターからハンドガンを取り出して構え、セリカが先に2発撃ったが倒れていた兵士が動き出して、ルルを守るように兵士は肉壁となり兵士の体に弾丸が命中し、兵士の体から血が噴き出すがビクともせず、弾丸は防がれた――――――。


 こちらもハンドガンを撃とうとしたが兵士に防がれた様子を見て、ハンドガンのトリガーから指が少し離れた。

 今撃っても同じく防がれるだろう――――――。




 『やってくれるわね…!!』


 『そんなことしても無意味だよ?』


 「普通の弾丸じゃダメか…!」


 『私が足止めするわ! その隙に攻撃するのよ!!』


 『みんなやっちゃえ!!』




 リボルバーはナイフを防いだ勢いで飛ばされたまま、ルルの方に落ちている。

 アサルトライフルは車に置いてきている為、現状はハンドガンしかない。

 車にあるアサルトライフルを取りに行く暇は無いだろう。


 炎上している軍用車の近くには使えそうなハンドグレネードランチャーが落ちているが兵士の後ろに落ちている為、取りに行けば間違いなく攻撃されてしまう。



 考えている間もなく、セリカは服の中からナイフを取り出して姿勢を低くしながら両手を後ろに伸ばし、ルルに猛突進していく。


 セリカの突進する速度は車以上に早かった――――――。

 少なくとも秒速100mは超えている。



 すでに死んでいる9人の兵士が一斉にナイフや尖った鉄の破片を持ってセリカを襲うが真っ先に襲ってきた1人兵士だけ動きが止まり、残りの襲ってきた兵士の攻撃をセリカは後ろに飛んで避けた。




 『一気に動かせるなんて聞いてないわ!!』


 『あはは! 残念!!』




 9人の兵士はルルを守るように前に立ち塞がっている。

 そう簡単にはいかなさそうだ。




 「セリカ、あそこに落ちているハンドグレネードランチャーを取りたい!!」


 『わかったわ――――――!!』


 『させないよ?』




 ハンドグレネードランチャーがある方向に兵士は集まり、道を塞ぐようにかたまった。

 ルルも兵士の後ろに移動していてハンドガンで攻撃したとしても先ほどと同じように兵士を肉壁にして防がれるだろう。


 セリカは走り出して秒速100mの速度で右端から大きく回り込んで、兵士と炎上している軍用車の隙間を一瞬で通り抜けた。




 『こっちよ子猫ちゃんッ――――――!!』


 『――――――――!!』


 『撃ってッ――――――!!』




 セリカは大声でこちらに指示した。

 急いでハンドガンを構え直してルルの目の前にいる兵士に向けて全弾撃つが、弾丸は兵士の体や頭に命中するも血が出るだけでビクともしていない。



 普通の弾丸じゃ無理だ――――――。



 しかし、この射撃には意味があるはずだ。



 そうだ――――――――――。



 ルルを囲うように兵士が動いたがセリカは落ちていたリボルバーを拾い上げてこちらに投げてきた。



 注意を紛らわせる為だ――――――――!!




 飛んできたリボルバーを左手で受け取った勢いのまま左に1回転してリボルバーをルルの目の前にいる兵士に構えた――――――。




 「これならどうだ!!」




 人差し指でリボルバーのトリガーを引いて1発撃った。

 弾丸は兵士の頭に飛んでいき、頭に弾丸が命中すると頭を粉々に吹き飛ばして血が散乱する。


 兵士の頭は吹き飛んだ勢いでのけ反るも倒れず、動いている――――――。




 『嫌ッ――――――!!』


 「これでもダメなのか――――――!!」


 『私の家族を奪わないでッ――――――――!!』




 9人の兵士たちはこちらに振り向くと同時に襲い掛かってくる――――――。


 一番最初の迫りくる兵士の足にリボルバーを構えて撃った。

 1発目は兵士の左足を吹き飛ばして行動をほぼ不能にさせ、2体目の兵士には右足を撃ち、弾丸が命中すると転がるように兵士は倒れてリボルバーに残っていた2発をすべて撃ち切った。


 弾薬ポーチから青の弾薬シリンダーを取り出そうとするもナイフを持った3体目の兵士が大きく振りかざして襲い掛かってきてリボルバーの弾薬を装填して撃とうとするもリロードが間に合わない――――――――――。




 「くっ――――――!!」




 ナイフを持った兵士の攻撃が頭に当たる寸前で思わず目を閉じてしまいグサッと何かが刺さる音がした――――――。









 『To be continued――』

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