最終話 アリーナ、光を掴む
「あの二人のことを考えているのか?」
領館の執務室で、手元の書類から視線を
全てにけりを付けてから、
伝え聞く噂では、元聖女のミザリーは自分が移した後、取り返しのつかないほどに進行した病気を泣きながら回収し、元勇者のエイトは抵抗する犯罪者達を支配して恨みを集め、徐々に精神を壊していっているという。
「うん……
アリーナがそう、伏目がちに答える。
エイトに復讐を果たした後も、アリーナの心は囚われたままだった。
そんなアリーナの姿に、ルークは唇をグッと噛み締める。
「
ルークの言葉にアリーナは一瞬、「そうだよね……」と、フッと表情を和らげるものの、相変わらず心の中の霧は晴れない。
色々と
そのアリーナの視線を、不意にルークが
目の前のルークに、アリーナの焦点が定まる。
「……もう、前を見ないか?」
ルークはそう言うと、アリーナの前で膝をついて、そっとアリーナの手をとった。
真剣な表情で見つめてくるルークの瞳に、思わず吸い込まれそうになる。
「……傍にいたときは、その光に気付かず、むしろ当たり前だとすら思っていた」
突然向けられた目線に戸惑いつつも、握られたルークの手の温かさに、アリーナの瞳の奥が揺らめく。
「……無くした後も心の空洞に気付かず、それが自分なのだとずっと思っていた。でも、違った。何度、
そう言って眉間を寄せ、少し俯くルークの表情には、後悔の色が浮かんでいるようだった。
耳から入ってくるルークの、アリーナに向けられる低く艶のある声に、頬が徐々に
「光が消えたと知った時にようやく自分の気持ちに気付き、また光を見つけた時には、もう、自分の気持ちを抑えることができなくなった……」
窓からの日差しを受けて、ルークの体は淡く輝いていた。広がってくるミルクのような甘いルークの香りに、頭がクラクラしてくる。
「
まるで
手の甲から伝わるルークの体温に、五感で伝わるルークの存在感に、アリーナの胸の鼓動が高鳴ってくる。
「……俺のこの
アリーナの顔を見上げるルークの瞳に、熱がこもっているのが見えた。
その熱に呼応するかのように、アリーナの目から涙が一筋、溢れてくる。
「だから……これからずっと側で、君を守らせてくれないか」
……
……
……これがずっと、ずっと、私が待ち望んでいた言葉だったんだ。
溢れる涙の量が増え、胸が熱く、満たされていく感覚がする。
「……はい」
アリーナの返事に、ルークは立ち上がり、力強くアリーナを抱きしめた。
お互いにたくさん遠回りをしてきた。
それが無駄だったとも思わない。
けれど、初めて掴んだこの
そう思いながら、アリーナは自分を抱きしめるルークの体と、自分を見つめてくる熱を帯びた瞳に、素直に身も心も預けていった。
―― fin. ――
完結しました。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!
"アリーナ"も"ルーク"も光という意味があります。望美も、希望の光ということで、本作品のテーマは"光"でした。
★⭐︎★
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最後に、本作を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
またお会いしましょう。
転生した辺境伯夫人は勇者と聖女を許さない! 〜この異世界で、勇者だったあなたの立場を丸ごと奪ってやりますわ〜 となりのOL @haijannu
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