空中銀花

タムラ ユウイチロウ

空中銀花

いつものように


人混みの中を


歩いていた


何気ない


誰でもない


日常の一コマ


立ち止まって


ぼうっと中空をなぞる


苦しくはない


ただ、虚しいだけだ


そんなことを思っていた


突然


空に花が咲いた


銀色の花が咲いた


人々は見上げた


言葉はなく


銀花は人を眺めた


私たちの命は天秤の上にあった


流れる血潮に気づかずに


生きてきたことを罵るように


始まりを告げる鐘は


人々を飲み込み


花粉となって降りかかる


その瞬間


すべての人の心は奪われ


それが最初で最後の


天啓なのだと悟った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空中銀花 タムラ ユウイチロウ @you_monodiary

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ