自称善人の世直し生活

石原阿羅屋

第1話 善人面、始動

「あァ...ダリィ...」


 なんか、全部ダリィ...


 俺は今まで何やってたんだ?悪ガキ共を束ねて、大人でも偉そうな奴でも弱そうな奴はボコって金を巻き上げ、憲兵と鬼ごっこ、家に帰れば帰りゃしない親父を待ち続けるお袋と貧相な飯を食って寝る。


 もうこんなダリィことやってられるかよ...そうだ、善人って奴になってやろう、こんなおままごとやってたってこのクソッタレな生活からは抜け出せねェ、どっかの貴族だかに恩を売って、金貰って、こんなクソッタレな生活からおさらばだ


 そう小汚ない裏路地で決心した俺は、早速困ってる金持ちでもいないかと裏路地の奥へと漕ぎ出した。


 路地を歩いて数分、早速見つけた、老婆からカツアゲしてる二人のガキだ。たしか、ヨーンとルドルフつったか、あの顔を見りゃ老婆はまぁまぁ持ってたみてぇだな


 いつもの俺ならアイツらをイビって巻き上げるとこだが、今の俺はお人好しの甘ったれなんだ


「ワリィがその儲けは婆さんに返して貰うぜ」


 俺のその言葉に振り返るガキ二人、その顔は素人を威圧せんとガンを飛ばしてくるが、その程度でビビる訳がねぇだろうがよ


「アァン?」


「俺達にケチつけ...ちっ、お前かよ、なんだぁ?今更善人面しようってのか?」


「オォン?」


 ヨーンはなんか喋れよ。


「ピーピー喚くな、決めたんだよ、善人面して生きてくってな」 


 俺がそういうとルドルフの野郎が殴りかかってくる。


「そうかッよッ」


 その腰の入った拳は素人よりかはマシだが、俺から言わせりゃ下手っぴだ、その拳をサクッと避けてやると横からヨーンが上段蹴りをしてくる。


「ッ!」


 そこはなんも言わねぇのかよ!と思いつつその蹴りを掴んでそのまま押し返してやる、それでヨーンは体勢を崩し後ろにたたらを踏む。


「どうしたァ?これで終わりかァ?」


「な訳ねぇだろォがッ!」


「オォン!」


 そういうと左右から各々ルドルフが後頭部に上段蹴り、ヨーンが前から下段蹴りをしてきやがる、そう来なくちゃ面白くねェ!


 下段蹴りは脛に足首の下段蹴りで相殺、上段蹴りには上半身を回して脛に肘をお見舞いしてやる。


「ガッ!?」

「グッ!?」


 やられた二人は脛を抑えてケンケンしてやがる、実に滑稽だ。


「お前らじゃあ俺には勝てねェ、ワカッてンだろ?」


 そう俺が言ってやるとルドルフは俺に老婆の財布を投げると捨て台詞を吐いて去っていく。


「チッ、なにしてぇのか知らねぇが気味が悪りぃぜ...行くぞ」


「チッ、オォウ」


 俺はその後ろ姿を横目に見送り、老婆に財布を返してやる。


「おい婆さんこれに懲りたらこんな道使うんじゃあねェぞ」


 婆さんは身なりを見た限りじゃ金持ちってわけでもねぇ、なんなら俺ら《貧乏》よりの身なりだ、だが財布にゃ結構入ってやがるな。


 「ありがとうございます...これで孫に制服を買ってやれる...なんとお礼を言ってよいか...」


「お礼なんてガラじゃねェ、さっさとこんな所は抜けるんだな、婆さん」


 そう言って俺は去ろうとする。


「お待ち下され、お名前だけでも...」


 そういわれ俺は...





















「アドルフ...アドルフ・ペルツルだ」


 そう言ってその場を去った。


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