エンジェルコイン AngelCoin

Niceと云えば銀色

1?

 月明かりが覆う草原。すきま風が刺す。家族の団欒。

「お母さん、また 絵本っ!」

「もう、しょうがないわね。でもいいの?何回も読んでいるのに。内容は覚えているでしょう」

子供は飽き性で興味が四方八方へ向きやすいが、その場限りではない様子。

"お話"の内容は至って平凡。本の置いてある場所に出向けばあるような伝承もの。母親は子供が興奮で退けてしまった毛布を首まで掛けた。暖かくした状態でなければ読み聞かせに集中できない。楽器には劣る肉声にしては澄んだ音が文字を奏で始めた。

「人が地上に生まれていない程の昔。とても高く普通の方法ではたどり着けない空に天支(てんし)と神が住んでいました。仲の良い天支てんしと神は動植物が静かに生命を育んでいた世界に寂しさを覚えました。自分たちと同じように喜んだり怒ったり哀しんだり楽しんだり、感情を共有できる生命体を必要としたのです。そこで人を生み出そうと話し合いをします・・・しかし上手くいきませんでした。意見が割れて喧嘩したのです。怒った神は天支(てんし)を攻撃しました・・・。時は過ぎて神が天支を忘れてしまう頃この地上には天支の存在を神と同じく、忘れてしまった人間が沢山暮らすようになったとさ。おしまい」

 母親は手製の絵を数枚かざして読み終える。子供は楽しく聞いていたことを証明する満開の笑みだ。

「読み方は同じなのに聞いたことないー」

子供の興味は尽きない。一点以外は眼中にない。一枚の絵には天使と神が相対していたが天支の姿は見当たらない。

「私たちの家に代々伝わるお話だからね世間に広まることはないわ」

「ホントにいるのかなぁ」

この世に存在するとは思えない材料の揃う天支の存在が妙に気にかかった。

「んーと前に聞いたお話だと"天使"だったのに、なんでこのお話だけは"天支"なの?字が一緒じゃないよー」

「私が知っている話ではね。"天支"様は"天使"様より偉い存在と聞いているわ。天使様は力を分け与えられているんだって。」

文字の違いを指で示しながらゆっくりと説明した。

「ええーーっ!?神様から貰ったんじゃないの」

\「なんと、○○○○○○○○ったといわれているの」\

「・・・すぉーすぃー」

スマホで電力不足の通知を貰うが使用を続け、電源が落ちた寝落ち。母も安心して睡眠の時間を迎えるのだ。少量の涎が垂れる頬に掛かる髪を優しく払う。

「明日も・・・どうか健やかに」

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