紫陽花が咲く時に

ブンブン丸

第1話

夢見月。

小雨に揺れる若い緑と、花けぶる公園で、あなたと出会った。


とんでもなく、急で。途方もなく、無防備な。突発的な事故に近い、いや事故そのものと言える、再会だ。


案山子みたいに立ち尽くして、呼吸の仕方も忘れてしまった私は、指一本も動かせないまま、ただ、あなたを見ていることしか出来なかった。


あなたの、私を見たときの、酷く驚いた顔と、慌てたように取り繕う様は、ずいぶん前に予想した範囲を出なかったけれど。


あなたの、相変わらずに澄んだ瞳は、それはそれは痛い程に、私の心を叩いたんだ。


忘れてくれれば、立ち去れたのに。

怒ってくれれば、楽だったのに。

笑ってくれれば、良かったのに。


そんな風に、泣いてるなんて、卑怯じゃないか。

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紫陽花が咲く時に ブンブン丸 @bunbun-maru

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