預かり物

ブンブン丸

第1話

ある時、君は心を捨てた。


つい手を滑らせたようなフリで、ポロっと落っことして、そのまま拾わなかった。


もうコレはいらないのかい?


ぽっかり空いた穴に、同じ形の何かをはめ込んで、新しい私♪などと、のたまって。


それは、同じ形をした全く異質なものじゃないかな?


君の胸から歪に飛び出しているじゃないか。

それは君が、そんな状態が不本意だと思っている証拠だ。


いつもよりテンション高く、大きな声で笑う君。

活字は嫌いなくせに、小説なんか買っちゃって。

楽しく読めてる?


ともかく、明らかに君は変だ。


君は必死に、何かを見ないようにしているんだと思う。

何かを忘れて、捨てて行こうとしているんだと思う。


それはきっと、ずっしり重いし。捨ててしまわないと、目をそらす事も出来ないような物なのかもしれないね。


でも、コレは拾っておくよ。

代わりにとりあえず拾っておくから、大丈夫になったらもう一度向き合ってみなよ。


見たくも、考えたくもない事は、見なくても考えなくてもいいよ。

でも、なかった事にはしちゃいけないよ。


いつか、振り返りたいと思う日がくるから。

必ずそんな日がくるから。


良いことも悪いことも、全く同じ出来事は二度とは起きない。どれも似ていて、異なるものだ。

時は間違いなく流れていて、過去は今を、今は未来を作るためにどうしようもなく必要なものなんだ。


だから、忘れないで。

ココに心が残っていることを。

いつか、受け止められる時が来たら、どうかこの心をまた受け入れてあげて。


これは、あなたの大切なものなんだよ。

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預かり物 ブンブン丸 @bunbun-maru

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