ある東京から広がる声のない断末魔《弐》

 部屋に一人ただ衝撃の事実を目の前に恐怖を感じていた俺。もういないある死者の名前をもう一度見る。やはり間違いない。

 二人はもう死んでいる。

 この状況は覆せない。じゃあ俺がこれからすることは?ただ平凡に過ごすこと?

―――いいや違う。ただ状況を受け止めて体育教師代行が誰かをまずは調べること。それが何より一番に考えなければならない。そしてもう一つ疑問があがる。

 

 なぜ学校側は死んだ先生たちのことを生徒に知らせない?なぜ隠す?


 裏がある?それは分からない。東京の日野市の滅亡もわからない。


◇ある東京から広がる声のない断末魔【弐】

 日野市の全滅を受け止め、先生の死を受け止める。そして情報を手に入れる。

 まだ明るく夜の更ける時間とは少し遠いこの時間帯。学校帰りのもあって体は運動を拒否する。もちろん俺は帰宅部。

 俺の親は日野市について語っていた。

 「いやだねぇ。日野市の人たちが全滅だなんてぇ」

 母は残念そうに父に発する。

 「そうだな、でも住民たちの思いは変わらないまま受け継がれることを願うまでだな」

 父は日野市の人たちのことを思いそう口にする。

 でもなぜ日野市の住民が全滅したのだろう?

 俺は調べれば出てくるのではないかと思い、PCを開きもう一度『日野市の全滅 原因』と検索欄に打ち込む。

 一人部屋でPCを触っているため部屋はとても静かで、時計の秒針の音が一定の間隔でなり続けている。

 「これか‥‥‥?」

 俺はそう漏らし、特に気になるワードが並べられるサイトにカーソルを合わせ、興味と少しの不安、恐怖を感じながらマウスを鳴らす。

 少しだけ読み込みに時間がかかっていたけれど特に目立つバグとかもなくサイトが開いた。

 「専門家に訊いてみた?」

 サイトの一番上に大見出しとして飾られた言葉を口にだしながら、読む。

 気になったのでマウスの中心に配置する円状のものを下向きに回しながら記載されている内容を目に通す。

 「病気などウイルスの可能性」

 気になる見出しを読む。

 スクロールすればいろいろ書いてある。

 

〇記載内容。

 【病気などウイルスの可能性】

 専門家に訊きました。

 僕:病気などウイルスの関係は考えられそうですか?

 専門家:はい。そうですね。考えられる感じはしますが、なんというのでしょうか、ウイルスは見つからず病気もなくて‥‥‥。

 僕:それはどういうことでしょうか具体的に教えてくれませんか?

 専門家:具体的に言うと亡くなった方たちを調べた結果、特に異常は見られず、謎の死であったんです。転落死やショック死。あとはほかにもありますがどんな風に死んだのかがよくわからないんですよ。

 僕:なるほどぉ


 結論。

 病気やウイルスの可能性はゼロに近く、ほかの理由が考えられるということになります。


◇戻る。

 そんな風に記載されていた。そして広告の下までいってこの情報を載せた人の名前を見る。別に載せる必要性は感じないけれども。

 そしてその名を読むと。

 「浅野 祐樹‥‥‥‥」

 

 俺たちのクラスの主任?


 だんだんと混乱し始める頭。


 であるなら日野市で死んだあいつは別人?


 部屋には一人で、静寂とした空間が俺を覆っていた。

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ある東京から広がる声のない断末魔 夏屋うみ @natumika

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