Animal

燃えるごみ

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何かの公理系を基に、何かを築き上げる。そのことを皆んな誇らしく、それが正しいと言い張る。実際、それらが僕を生かしているのであるが、だとしても、それを押し付けることは、いつか間違いになる。そんな気がしていた。だから僕は部屋にこもり、ひたすら自堕落に生きている。金は幸い、親の遺産で足りる。この分だと、今は27なので後50年は尽きない。そのときは寿命が来て、金は要らなくなっているだろう。

僕は、労働をしなくても生きていける。それすなわち、この社会での価値を失うことであった。この社会の価値というのは勿論、間違ってはいるが、同時にそれが人を支えている。それにより、行く先を決めてくれる。僕は行く先を失ったとも言えるのだ。

いつものスーパーで惣菜を買う。金は一応あるのだが、無駄に使うことはしたくない。僕にとっては、スーパーの惣菜で十分満足できるし、それより高いものは逆に不味く思えた。

今日は月曜なので人が少ない。お昼時ということもあって、レジはスムーズに進んだ。

「あっ、すいません。ちょっと待ってください。」

会計を待たさせて、向かった先はサプリメントのコーナーだ。僕は幼少の頃から大抵の野菜を嫌ったため、今ではサプリで栄養を補うことが当たり前になっている。幸い、それで体を壊したことはない。なんなら、普通の人より元気なくらいだ。

あらゆる苦しみもなく、毎日、気楽に過ごせる生活は手放しがたかった。

一度、本気で働こうかと考えたが、求人雑誌を取っただけで、すぐに止めた。自分のやりたいことを押さえて、ひたすらやりたくもない嫌なことをするというのは生物としてどうなのか。そんな疑問が宿り続けて、結局、その場限りの快楽ばかり。僕は人間ではなく、動物なのだろうか。

親から譲り受けた一軒家に帰ると、まずピアノを弾く。ピアノの様に楽譜(記号)を動作に変換して、それが耳に伝わるのは、とても心地良い作業であった。

しばらくして、飽きたらスマホで時間を消費する。そして、食って、寝ての繰り返し。

それもこれも、何かを得るための、言ってみれば修行に近い。

僕はこれから何を得るのだろうか。そして、その先にどの様な姿をしているのか。

日々は続き、いつか終わる。

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Animal 燃えるごみ @moemoegomi

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