第32話 森での冒険!


「はぁ、お腹空いたな」

 ユウトはお腹を鳴らした。

「さっき昼食を食べていたばかりじゃないですか」

「ああ、そうだった」

 二人は、暗黒の森へ向かった。仲間は二人だけだった。大人数で森へ向かうことも考えたが、人数を選抜した。

「おお、ここが暗黒の森か!?」

 ユウトは立ち止まった。視界の先には、鬱蒼うっそうとしげ森が広がっている。

「本来は、立ち入り禁止の場所だ」

「わたしたち、先生に許可をもらいました!」

「だけど、先生たちも顔をしかめていたな」

「マジック・トライ・バトルに参加しているのだから、仕方ありません」

 ユウトは森に向かって、石ころを投げつけた。すると、森の奥から、つるが伸びてきて、投げた石を投げ返してきた。

「うお。投げ返された」

「あれに掴まれたら、きっと森の奥へ引きずり込まれてしまいます」

「やっぱり、ただの森じゃないな」

 二人は不安の顔をしかめた。

 それから、慎重な足取りで、森の中へ入った。森の中へ入ると、すぐに黄金に輝くなし畑が見えた。ユウトはなしに手を伸ばそうとして、手を引っ込めた。

「待って下さい」カナミは言った。「もしかしたら、魔法がかかっているかもしれません」

「大丈夫だって」

「トラブルはけるべきです」

 ユウトは助言を無視して、手を出した。だが、次の瞬間、なしの中にい込まれた。

「ここは?」

 ユウトは目を開けた。そこは、梨の中だった。暗くて、通路が伸びた場所だった。

「もう、ユウトさん」

 カナミも一緒だった。

「俺たち、吸い込まれたみたいだな」

「ですね。とにかく、脱出しましょう。どうにかすれば、出られるはずですから」

 二人は歩き出した。そして、分かったことは、この通路は無限に伸びていて、いっこうに出口がない事だった。

「はぁ、疲れました」

 カナミは、通路の脇にあった石の上に座った。

「困ったな」ユウトは、岩でできた壁をなぐったり、蹴飛けとばしたりした。「ぜんぜんダメだ」

 カナミは肩をすくめた。「確か、書物で読んだことがあります」

「何をだ」ユウトをカナミを見た。

「これは、足止めなしです!」

「何だそれ」

「足止め梨は、言葉の通り、旅人をそのなしの中に引き込んで、足止めしてしまう梨です」

「どうやって抜け出すんだ?」

 カナミは、記憶をたどった。

「確か、梨の中にあるスイッチを押すんです。だけど、そのスイッチは、何かに化けていたり、姿を変えたりしているので、探すのが大変なんです」

 ユウトをは思い出した。「俺たち、この中を歩き回ったけど、何もなかったぞ。ただ通路があるだけで、怪しいものは見当たらなかった」

「おかしいですね」

「お、何かやって来た」ユウトは立ち尽くした。

「初めまして、コリンと申します!」

 ユウトはその者を見た。それは節だった手に、ぼろをまとった妖精だった。

「お前、妖精か?」

「ええ、ええ。わたしはこの梨に捕まったあわれな妖精です」

「本当か?」ユウトは首を傾げた。「とか言って、俺たちをだまそうとしているんじゃないだろうな」

「いいえ、滅相もありません」

「じゃあ、証拠を見せろ?」

 ようせいはねたり、踊ったりした。

「お前面白いな」ユウトは頷いた。「お前は、信用できるな」

「ちょっと、本当ですか?」カナミは首を傾げた。

「おお任せろ。こいつは、本物だ」

 ユウトは頷いた。

「これを見つけました!」

 妖精は手のひらにベリーを差し出した。

「何だよ、ベリーじゃないか」

「はい。脇に、これを食べてねと、看板がありました」

「どいう意味だ?」

「たぶん。これを食べると、外に出られるという意味だと思います」

 ユウトは首を傾げた。「限りなく怪しいな」

「わたしは、食べたくありません」

 ユウトは頷いた。「お前は、嘘を言っているんじゃないだろうな? もしかして、俺たちを騙そうとして、それを食わせようとしているのか?」

「滅相もありません」コリンは首をぶんぶん振った。

「カナミ、どう思う?」ユウトは尋ねた。

「私にはわかりません。騙そうとしているようにも思えますし、もしかしたら本当のことを言っているように思えます」

「じゃあ、お前食べてみろ」ユウトは言った。

 妖精は泣きながら訴えた。「怖くて食べられません」

「どうして、お前はここにいるんだ?」

 妖精は、事情を説明した。森に、木の実を採集しに来たと言った。

「本当か?」

「勿論。嘘など言っていません」

 ユウトは頷いた。それから、一粒のベリーを手に取った。

「食べるんですか?」妖精は言った。

 ユウトは口に入れて飲み込んだ。

 すると、次の瞬間、なしの外に出ていた。

「おお、やったぞ」

 それから、しばらくしてカナミとコリンも外に出てきた。

「おお、やったな」

「ユウトさん」カナミは言った。「いきなり、食べるなんて無茶しないでくださいよ」

 ユウトは頷いた。

「それで、これからどうしよう?」

 カナミは答えた。「私たちの目的は、暗黒の森へ入って、課題をとりに行くことなで、もっと奥に入って行かなければなりません」

 コリンは驚いた。「森の奥へ。危険です! それは、とても危険なことです!」

「分かっているぞ」ユウトは言った。

「だったらどうして!?」

 ユウトは事情を説明した。MTBの課題をとりに行かなくちゃならい。

「だったとしても、道案内もなしで行くなんて」

「仕方ないだろ」

 コリンは頷いた。「だったら、わたしが案内しましょう」

「いいのか?」

「助けてもらったお礼があります」

 三人は歩き出した。しばらくして、足を止めた。そこには、グレープスの群れが眠っていた。グレープスは二メートルほどの大きさで、太い腕と、鋭い爪を持った野生の生き物だった。

「引き返しましょう」カナミは言った。

 ユウトは首をふった。「いや、突き進もう。課題は、この先だ!」

 カナミは閃いた。「そう言えば、九行詩きゅうぎょうしに『暗黒地帯……。

 入ってはならぬ場所。だが、今だけは導かれて。

 悪鬼あっきは眠る。心豊かに居眠りを。

 我らは探す、黄金を。

 それが隠されしは、森の奥。

 注意せいよ。探せど探せど、見つからない。

 時間が迫る、怪物が……!

 逃げて転んで、立ち向かえ。

 真なる瞳だけが切り開く!』と、書かれていました。つまり、課題はこの奥にあるということです」

 ユウトは頷いた。「課題はこの奥だ。だけど、どうやってこの奥に進むんだろう」

 コリンはポケットから『足止めなし』を取り出した。

「それどうするんだ?」

 コリンは笑った。それから、梨を怪物の寝床に向かって投げつけた。すると、怪物グレープスは、鼻でにおいをかぎ取ると、食べ物の匂いに興奮して目を覚ました。

 その後は、見るもおぞましい形相で、なしに食い付いた。だが、梨に触れた瞬間、グレープスはなしの中に吸い込まれた。

「やったぞ」ユウトは言った。

「これで、グレープスがいなくなりました!」

「お手柄だ! 奥に進めるようになった」

 カナミは首を傾げた。「我らは探す、黄金を。それが隠されしは、森の奥。と、九行詩にはあります。私たちは、さらにこの奥に進まなければなりません」

 ユウトは歩き出した。コリンも一緒だった。三人は和気あいあいとしながら、森の中の散策を楽しんだ。

 コリンは鼻歌を歌った。コリンは陽気な妖精だった。立ち止まったり、ちょうに心を奪われたりと、自由奔放ほんぽうだった。

 三人は森の奥へ、奥へと向かった。だが、かなり奥まで来たとき立ち止まった。

「奥まで来たけど、課題は見つからないぞ」

 違和感を感じたユウトは立ち止まった。

「おかしいですね。詩によれば、たしかに森の奥へ進むと書いてあったですけど」

 コリンは地面に大の字になって横になった。

 それから、三人は森の中を調べた。だが、いくら調べても課題は見つからなかった。三人が、諦めかけたそのとき、コリンは言った。

「何か見落としがあるのかも?」

「何だよ?」ユウトは首をひねった。

「さっき聞いた詩の中に『探せど、探せど見つからない』と、あった。つまり、簡単には見つからな場所にあるんだよ」

「じゃあ、どこを探すんだよ?」

 コリンは肩をすくめた。そのとき、森の奥から、地響きがした。

「なんだ?」ユウトは驚いた。

 カナミはかをお青くした。「九行詩に『時間が迫る、怪物が……!

 逃げて転んで、立ち向かえ。

 真なる瞳だけが切り開く! と、ありました!」

「って事は」ユウトは早口で言った。「怪物がせまっているのか」

 視界の先には、巨大なグレープスの親玉が現れた。巨大で、腕が太く、鼻息だけで、吹き飛ばされそうな猛獣もうじゅうだった。

「逃げろ」

 三人は逃げ出した。背後からグレープスの親玉が追った。三人は、どんどん追い詰められていった。大きなの生える、岩場に逃げ込んだ。だが、これが間違いだった。逃げ場がない。逆に追い詰められてしまった。

 グレープスの親玉は鼻を鳴らし、爪を鳴らして獲物を威嚇いかくした。

 カナミは震えた。

 ユウトはどうにかしようと思って、前に出た。

「戦っても、勝ち目はないです」

 コリンは震えながら呟いた。

「じゃあ、どうしろって言うんだ」

 コリンはれないように持っていたなしを落とした。

「そうか」

 ユウトは閃いた。「梨にれろ!」

「でも」カナミは叫んだ。「なしにふれれば、私たちが閉じ込めらえてしまいます」

「勘違いだった」ユウトは言った。「俺たちが梨に触るんだ!」

「グレープの親玉に触れさせるんじゃなくてですか?」

「そうだ」ユウトは叫んだ。それから、みずからが梨に触れた。

 次の瞬間、ユウトはその場から消えた。

 その場に残されたカナミと、コリンは息を飲んだ。そこにグレープスの親玉が襲いかかった。獲物を逃すまいと、つめを振り上げた。

 カナミと、コリンは意を決して、梨に触れた。

 二人は、その場から消えて中に吸い込まれて行った。

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剣と魔法のファンタジー~未知と謎の大陸を探検して、世界の秘密を解き明かす!~ kenken @kenken0508

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