第31話 暗黒の森!


 翌日から、学校は休暇きゅうかとなった。

 二週間ほどの、休みだった。生徒は、日頃の疲れをいやしたり、羽をのばしたりと、それぞれ思い思いの生活を送った。いつも忙しかった生徒はこの休みを利用して、普段はできない趣味の活動にせいを出したり、イベントに参加する生徒もいた。

 ユウトと、カナミ、サーシャ、カーマンの四人は休憩室のソファーに集まった。

「さあ、始めるぞ」

「ここでですか?」カナミは言った。

「そうだ」ユウトは肩をすくめた。

「もっと広いところで魔法を使用したら?」

「いいんだ、ここで」ユウトは目を閉じると、魔法を使った。「どこ行った、なくなった、消えたものを現れよ!」

 魔法を使ったのに、何も起こらなかった。

「ダメだ、失敗したぞ」

「ダメダメじゃない~い!」カーマンは言った。「きっと、魔法が悪かったのね。この魔法は、ある程度限定された場所で使用しないと、効果がないみたいね」

「でも、調査によれば、これで」

「ダメダメ。もっと具体的なものじゃないと効果がないわ。もし、何か具体的な内容が決まっていたないのなら、これに近い儀式で見つける事が出来るわ」

 カーマンは手に持っていた書物を見せた。

「ずいぶん、難しい魔法ですね」

「あら、アチシ最近勉強したから物知りになったの。それでどうする? やってみる、それともやってみない?」

 四人は場所を移動すると、準備を整えた。

「じゃあ、やりましょう」

 カーマンは言った。

 移動した場所は、魔法実験室だった。そこは、広々とした部屋だった。多少の魔法の使用が許されているので、気兼ねなく魔法が使える。

「じゃあ、やるわよ」カーマンは言った。

 四人は準備を整えた。

 ユウトは、書物をしっかりと読み、それを実践した。

「天地天明の光!」

 言葉を発すると同時に、紫色の粉を炎に投げ入れた。次の瞬間、炎が燃え上がり、オレンジ色の閃光が発せられた。

 次にカナミ。

「我、求める、来光らうこうの導き!」

 カナミが、緑色の粉を投げ入れると、ぱちぱちと火花がのぼった。

 サーシャ。

「求めるは、運命!」

 黄色の粉を炎の中に投げ入れると、閃光せんこうがあがった。

 そして、最後にカーマン。

「いでよ、宿命の天文!」

 カーマンがすべての粉を集めると、まとめて炎の中で燃やした。すると、四色の炎が同時に燃え上がって、高く燃えさかった。

 その後も、祈り、呪文をささげた。

 まいを踊った。

 やがて、熱狂ねっきょうが最高潮に達したとき、ユウトは、羊皮紙を炎の中に投げ入れた。

 炎は、大きく燃え上がって、中から焦げ付いた羊皮紙が現れた。

 そこには、九行詩が記されていた。ユウトは、手に取って、その詩を読んだ。

『暗黒地帯……。

 入ってはならぬ場所。だが、今だけは導かれて。

 悪鬼は眠る。心豊かに居眠りを。

 我らは探す、黄金を。

 それが隠されしは、森の奥。

 注意せいよ。探せど探せど、見つからない。

 時間が迫る、怪物が……!

 逃げて転んで、立ち向かえ。

 真なる瞳だけが切り開く!』

 四人は、文字を読むと、その場に倒れ込んだ。

「意味わかんねぇ」

 ユウトは疲れ果てて天井を見上げた。

 隣で倒れていたサーシャが言った。「これは、私たちの未来が記された、未来魔法です。これに記されている事によれば、わたしたちは、暗黒地帯と呼ばれる場所いるらしいです」

「何だよ、暗黒地帯って? 聞いたことねぇ」

 サーシャは首をひねった。「たぶん何か比喩ひゆでしょう。暗黒地帯というくらいですから、暗い場所なんでしょう」

 カナミは言った。

「暗い場所と言ったら、校内でいったら、秘密の通路とか、東館の通路などがありますが。それ以外となると、外にある森しょうか?」

 ユウトは言った。

「外の森は立ち入り禁止だぞ。暗黒の森と呼ばれている!」

 カーマンは瞳を輝かせた。

「神秘的に響き。きっと、そこよ。詩にもあったでしょう、暗黒地帯。ネーミングとピッタリの場所じゃない?」

 ユウトは頷いた。「もし、そこだったとして、俺たちはそこに行くのか?」

 カナミは神妙な表情で頷いた。

「きっと、行くですよ。あの、先生たちの重々しい表情を見たです。きっと、あの表情は、試練の内容が厳しいことを物語っていたです」

「なら、俺たちは突撃すればいいんだな!」

 カーマンは首を傾げた。「俺たち?」

「ああ、そうだ。俺たちだ」ユウトは言った。「俺は、一人でやれるとは思ってねぇぞ。俺は、強いところもあるけど、一人じゃ弱いんだ。すぐ、腹は減っちまうし、道には迷うし。ここまでやって来たのは、みんなのおかげなんだ」

 サーシャは言った。「ユウトさんは、頼りになるときと、ならない時の差が激しいです」

 カナミは言った。「私がサポートするです」

 カーマンだけは反対した。

「彼といたら、命が幾つあっても足りないわ。いつか、古代の魔法王国に行ったとき、彼無茶ばかりしていたもの!」

「カーマン。頼む」

 ユウトは頭を下げた。

「な、何よ!?」

「俺、みんながいねぇと、何にもできねぇんだ」

 カーマンは狼狽うろたえながら言った。「嫌よ。危ないことは苦手なの」

「でも、いてくれると助かる!」

 カーマンは背を向けた。

「ダメよ。そんなこと言ったって」

「頼むよ」

 カーマンは振り向いた。

「もう、しっかたないわね。私がいないと、何もできないでしょう。もう、そんなこと言われたら、協力するしかないじゃない。いいわ。でも、いちよう森に行く際は、先生に一声かけるのよ。もし間違っていたら、止めてくれるはずだから」

 ユウトは頷いた。 

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