(5)
その時、更に別のどこかに強制転移。
「何だよ、これ? いいとこだったのに……」
アンデッド化版の「私」が、そうボヤく。
何も無い。
殺風景な空間。
そこそこの明るさなのに、太陽や月や……何かの炎のような光源が見当らない。
地面や床らしきモノが見当らないのに私とアンデッド版の「私」は宙に浮いている。
地面に相当するモノが見えないだけなのか、しゃがんで足下を手で探るが……何も無い。
魔法か……別の力……それが働いている場所に私とアンデッド版の「私」は居るらしい。
「お前たちの力を借りたい」
中年と初老の間ぐらいの
「あたしが、あんたの思い通りにならなくなった途端に、世界ごと『凍結』したヤツがぁ? どの
「依頼を果たせば、望みを叶えよう」
「じゃあ、何が有っても、あたしを2度と『凍結』しない事」
「1つ訊く、こいつには別の世界に行ける能力が有るのか?」
「今まで会った『あたし』の中では……か〜な〜り、用心深い方だね、『あたし』」
「有る」
クソ神から返ってきた答は……私の懸念が当っていた事を示していた。
「なら、私の世界と私の仲間の『凍結』を解け。その上で、こいつみたいな世界丸ごと滅ぼしかねないヤツが、私の世界に来ようとした時には、その事を私の世界の連中に知らせろ。あと、あんたは時間操作も出来るんだろ?」
「ああ……」
「なら、こいつみたいなのが私の世界に来る時には、それを迎撃する為の準備を整えられる時間を与えろ。そして……」
どうせ、ロクな事じゃないのは判ってる。この「神様」が約束を破る可能性は有るが……一応は言っておくべきだろう。
「私が死んでも、私の望みを叶えろ」
「注文が多いが……いいだろう」
「で、何をすればいいの?」
「お前たちの
「あんたにとって都合が悪いモノが生まれてしまったんなら……お得意の『凍結』をすればいいだろ?」
「残念ながら……チャンスを逃した。私が気付くのが、人間の感覚に『翻訳』すれば……ほんの数時間だけ早ければ、その手が使えたが……今は……」
「今は?」
「私は、この
「待ってよ、じゃあ、あたしや、こいつにやったみたいに、世界ごと『凍結』とかやったら、どうなんの?」
「判らない」
「はぁ?」
「『凍結』そのものは可能だが、その結果、どんな影響が出るかは、私にも予測不能だ」
何か……おかしい。
この「世界」に一方的に干渉出来る筈の超越者サマが……まるで、この「世界」で起きた事から重大な悪影響を受ける可能性が有る……そう言ってるかのようだ……。
私の知らない裏が有るようだ……例えば、このクソ神よりも同等か更に上位の「神」が居て、そいつのせいで、このクソ神は取れる手段が限られている……とか。
「まぁ、いいや。その
アンデッド版の「私」が、そう言うと……。
「阿呆かッ?」
「いい加減にしろ、この無能神」
目の前に出現した大量の文字と数字を見て、私とアンデッド版の「私」は、ほぼ同時に罵声。
「お前たちが要求した殺害対象の情報だが……?」
「あのね……殺害対象の
どうやら、アンデッド版の「私」は……このクソ神について、私が知らない事も知っているらしい……。それは……何だ?
「必要なのは……殺害対象が今までの人生がどんなモノだったかだ」
「……わかった……」
クソ神の声は……何か疲れているようだった。
そして……私とアンデッド版の「私」が殺さねばならない「私」のこれまでの人生が……。
「人選ミスじゃない? あたし、たしかに世界ごと滅ぼすのは得意だけど……こいつ、自分の世界を滅ぼしてでも、自分だけは生き残るタイプの奴だよ……」
「人選ミスの可能性は有る。私は……こいつに一番性格が近い
……クソ……。
私に良く似た「私」。ただし……私と違って……仲間というモノを持った事がない「私」か……。
「だが……『メスガキ』と呼ばれる
テンプレから外れた「生意気なメスガキ」ですが多元宇宙規模の神様を敵に回しました @HasumiChouji
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