第2話 後編



【10:21 コメントが付きました】


 通知音に目が覚める海堂。ベッドから起き上がるとパソコンへと向かう。


 ――海堂さん、出来上がったプログラムを早速試してはどうでしょうか? ふふ、そんなんじゃ私は見つけられませんがね

 X-z


【10:22 コメントの返信をしました】


 ――時間がかかるからもう動かしている。あんたくしもたくさん使ってんだろうよ。

 こっちの電気代と慰謝料、あとで請求させてもらいますわ


 10:36


【アクセス元を特定できませんでした】


 モニターに表示された文字。海堂は唖然とした。視線を落とすと、デスクのコーヒーカップを見つめた。


「は? 意味分からん。サバぶっ壊れてんじゃない?」


 文法も解析方法も間違ってないはず。海堂はまだ信じられずにいた。

 ふつふつと怒りが、同時に焦りが海堂を飲み込む。


【10:37 コメントが付きました】


 ――海堂先輩、バカですよねぇ。

 私はあなたの近くにいる存在です。コンピュータをいくら積み上げても私には辿り着きませんよぅ。

 コンピュータバカもいい加減にして欲しいですねぇ。

 さあ、あと残り時間も少しです。海堂先輩、頑張ってください。こんなんじゃ全然つまらないですよ。

 X-z


「クソがッッ!」

 デスクを叩く海堂。カップが倒れる。

「どうすりゃいい、100万人を一人一人確認していくのは時間が足りない。クソッッ! どうすりゃいいんだよ!」


【10:42 コメントが付きました】


 ――海堂先輩、ヒントです。私は大学の後輩で、同じパソ研です。まあ、推測してみてくださいよ。全員で42人。「後輩」「男」と属性で絞ってくださいよ。そうすれば対象は4人ですから。

 ここからは頭ですよ。海堂先輩の脳みそ死んでたら無理ですがねw

 嘘かもしれませんがねw

 X-新羅しんら


「ッ! てめぇ、新羅かよ! 一体何のつもりだよ!」


【10:43 コメントが付きました】


 ――海堂先輩、を特定できました?

 私です。新羅です。

 私は海堂先輩の居場所も行動も全て把握しています。先輩が何をしているか筒抜けです。

 私の居場所ですが、そうですねぇ、ここは自力で頑張ってくださいよ。

 X-新羅



 昔新羅の実家でよくコンピュータについて語り合っていた。もしかしたら今もそこに……

 走って行けば30分で着く。

 10:51

 海堂は装備を整えると、玄関を飛び出した。



 11:26


 新羅の実家に人の気配は感じない。だが、中が気になって、海堂は戸を開けた。


「ッ! なんだよこれ……」


 広がる腐臭。

 飛び散った血の跡。

 人の死体がそこにはあった。


「これは新羅の両親じゃ……。つか、こっちは新羅じゃないか……」


 鼻を塞ぎながらも状況を確認していく。


「やっぱり、これは……」


 すると背後から声がした。


「海堂先輩」


 振り向くとそこには……


「お、お前、G.O.D.の――」


 鈍い音とともに海堂は倒れた。そして一人、笑う男が立っていた。


「バカだなぁ、海堂先輩。だよ、




 G.O.D.

 人殺し、ハック、誘拐、詐欺など悪に手を染める組織。

 海堂は拉致され、一年間その組織で動いていた。

 ようやく逃げ出した海堂だが、まともな仕事に就けずにmytubeのチャンネルを開設し収入を得る。

 闇から解放された、と海堂は勘違いをしていた。

 そんな海堂うらぎりものに悪の制裁が下され、海堂は普通の幸せを得ることなく死んだ。



【12:00 コメントが付きました】


 ――時間切れ、ゲームオーバーです。

 goodbye kaidou.

 G.O.D.



この作品はフィクションです。

人名、団体等実在のものとは関係ありません。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


2023年10月07日

少し改稿しました。







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