第4話  妹の精神

 美波莉羅。あたしの師匠になってくれるという美波神邏さんの妹。

 実はクラスメイトなんだよね。


 スタイルこそ幼児体型だが、とてもかわいらしい容姿のため、男子にそれなりにモテる女の子だとか。


 だが、恐ろしく愛想がないんだよね~。口も悪いし。友人もごくわずか。

 あたし自身、あんまり近寄りたくないというか、苦手なタイプだった。


 とはいえ、お兄さんの神邏さんにお世話になる以上、邪険には出来ない。

 仲良くしてやってくれとも軽く言われてるしとあたしはため息混じり。


 ――翌日、学園に登校すると、一人ポツンと机で漫画読んでる莉羅を発見。なんか一人の坊主の男子が必死に話しかけている。

 当人は無視してるが。


 やはりモテるんだね。


 とりあえず、挨拶するかと莉羅の前に立つ。

 莉羅はなんだこいつと言いたげな怪訝な顔をする。実際話したこともないから無理はない。


 とは言いつつ、すぐ言葉が出なかったあたし。

 にらみ合いみたいな状況……

 そこに坊主頭が茶々いれてくる。


「あん? 誰だてめえ。おいらの女になんか用かよ」

「誰があんたの女だ」


 坊主男、その女に突っ込まれてるぞ。

 名前なんだっけこいつ。田原? 田中? 田岡?


「岡村はあっち言ってろよ。こいつアタシに用あるみたいだし」


 岡村? 全然違った。田がつくとなんとなく思ってたんだけどね。


「で、なに?」


 うわ、にらんできたよこいつ。ムカつく~。なんでこんなんがモテるんだろ?


「いやさ、あんたのお兄さん……」

「「美波妹」」


 おわ! 背後から別の声! 驚いて声あげそうになっちゃったよ。


 振り替えると……あらま。すごい美形男子。睫毛長っ! 鼻筋とか整いすぎでしょ……国宝級か?


 ……まあそれでも神邏さんには劣るけどね。なぜならあの人は美形に興味ないあたしすら虜にしたからね。この子はまだその域ではない。いい線はいってるけど。

 ……え、偉そう? ごめ~ん。


「今日はオレ達だけで帰れって話」

「お兄が言ったの? そもそも一緒に帰らなくてももういいと思うけどね」

「念のためってやつ。義姉には声かけといた」

「あいつは姉じゃないからね! 姉はアタシ!」

「どうでもいい」


 と、美男子は去ってく。一瞬あたしと目があった。

 ……なんか魔力を感じたよ。ただ者じゃないかも。


「おいこらルキ!」


 莉羅の言葉無視して行ってしまった。

 ルキっていうんだあの子。


 あ、神条ルキっていう中等部で有名な美男子か! 友人がなんか騒いでるの聞いたことあった。


「おーい授業始めるぞ~」


 おっと、席戻らなきゃ。



 ♢



 いや~今日も授業退屈だった~。神邏さんに稽古つけてもらおーっと。


 ……って! 結局挨拶してないじゃんか! 

 と、気づいたあたしは帰宅の道中だったが、学園に戻る。

 明日でいいかとも思ったけどね~


 あ、いたいた! 通学路同じ方向だったのか。

 ん? あのルキって子とその義姉は見当たらないぞ? 坊主とほかの女の子といるだけだ。


「ちょっと、ルキに後でどやされるの嫌なんだけど、なんなの岡村」

「なんだよ! あんなやつより付き合いはおいらのが長いだろ!」

「は? だったらなによ」

「だから!」


 うわー痴話喧嘩? 近寄りたくね~

 でもな~

 

 ……ん? 妖魔の気配!?


 あたしは周囲を確認する。

 そして莉羅の近くにいる女に視線を動かす。

 あいつ、別に莉羅の友人とかじゃないな! 多分怪しまれないように学園の生徒を装ってるんだ!

 なら答えは一つ!


 あたしは一目散に飛び出し、その女に飛び蹴り!!


 女は勢いよく吹き飛ぶ!

 よっしゃクリーンヒット!


「え! な、なにあんた!?」


 めっちゃ驚いた様子の莉羅。

 ここはかっこつけて……


「一般人は……下がってな!」


 カッコいい! 我ながらしびれる~!!



 ――つづく。


「次回 美波莉羅の精神。 」

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