第3話  美波神邏さんの精神

「あ、あのさ、神邏さんって何者なの?」


 あたし自身、誰かに興味持つのは珍しかった。

 そりゃあさ、あたしよりはるかに強い相手だもん。気になるのも当然でしょ?


  ……一目惚れしただとか、そんなんじゃないんだからね!


「……企業秘密みたいなものだ。俺の意思でペラペラ話せる事じゃない」

「う~ん、でもさ、ああいう悪い奴と戦ってきてる人なんでしょ?」

「……まあ」

「ならさ、あたしを鍛えてくれない?」

「――は?」


 何言ってんだこいつって顔、神邏さんはしてるよ。

 だろうね。でもさ、あたしとしてはこれからも悪い奴を倒すには強くなる必要があるんだよ。


 さっきみたいに無様に助けられるとか言語道断!自分の身は自分で守る!


「危険って、言ってるでしょ」

「そうは言うけどさ、人手足りてるの?」

「……さあ」


 さあ!?さあってどういう事!?

 あたしの呆れるような驚愕を見て、しかたなそうに話しだす。


「俺も、こうして魔族と戦うようになって日が浅いんだ。だから人間界守る人手足りてるとかはわからない。俺も自身、魔族発生したらこうして向かうだけだし。いうほど頻繁ってわけでもないからな」


 うーん魔族は見境なく暴れまわるわけでもないのかな?わりと賢いのかも。


「でもさ、人手いることに損はなくない?」

「……それはそうだが……」

「言っとくけど何言われようと、アタシは戦う事辞めないよ。アタシの正義が戦えと魂をゆるがすからね」

「なんだそれは……」


 少し神邏さんはため息つく。


「まあ、無理して俺のいない所で戦って死なれるような事あると困るしな……」

「え!?それじゃあ!」

「とは言っても、俺は人に教えるとか経験ないからな。強くなれなくても文句とかつけないでな」

「うんうん!やった!」


 アタシはウキウキで神邏さんの周りを走り回る。今思うと小学生みたいな行動だったね。恥ずかしっ!


「じゃあ連絡先でも教えてよ。ちなみに神邏さんの字ってどう書くの?」

「漢字か?……美波は美しい波と書いて……」

「へー東西南北の南じゃないんだ……」


 ん?美波?


「どうかしたか?」

「神邏さん、妹、いる?」

「いるけど?」

「あーやっぱし……」


 その名字は聞き覚えあるんだよ。アタシのクラスメイトに美波ってのがいるからね……


 美波莉羅のお兄さんなのか……

 あいつ、苦手なんだよね~



 ――つづく。


 次回 妹の精神

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