ホテルバイキング

青いひつじ

第1話


なんという解放感だ。

取引先との会議を終え、我々はタクシーに乗りネオン輝く町の中、本日のホテルへと向かう。



今回は先方のご厚意により、一流ホテルが手配された。

そこは夕食バイキングが人気のホテルらしい。


「目の前で調理してくれるからアツアツの料理が食べられるんですよ。昔行ったことがありますが、日本一のバイキングです」


と、タクシーの運転手も自慢げに話してきた。



到着すると早々に荷物を下ろし、エレベーターで50階へと上っていく。

バイキング会場に到着すると、入り口の外側まで長蛇の列ができていた。



「いやぁ、これは期待できますな」



「なんとも、ここの料理は海外で三つ星を獲得し、幾つもの賞を受賞したシェフが手がけているのだとか」


「正真正銘、日本一のホテルバイキングというわけですね」



列は少しずつ進み、とうとう内装が顔を覗かせた。

天井には、シャンデリアがこれでもかと輝きながらぶら下がり、茶色を基調としたインテリアからは温かみが溢れ出す。

天上庭園とはその名の通り、大きなガラス窓からは星彩にも見える夜景が広がり、夜空に浮いているのかと錯覚するほどであった。

料理はさることながら、この空間も人々を魅了するひとつなのであろう。



列はどんどんと進み、いよいよ我々の目の前にもつるんとした真っ白なお皿とカトラリー、お箸が整然と並んでいる。



私は、3つ仕切りの皿を選んだ。

前にいる上司は、大皿1枚とスープ皿を選んだ。

後ろにいる同僚は大中小一枚ずつ選んだ。


料理を取りながら後ろを振り向くと、同僚は大好物を皿いっぱい盛り付けていた。




「お前、食いしん坊だな」


「いや、見てみろよ。料理を取るのまで並んでるぞ。私はなるべく1度で望むもの全て手に入れようと思ってな」


「時間はあるんだし、また並べばいいじゃないか」


「そうこうしているうちに、売り切れになりかねんぞ」


「バイキングごときで大袈裟な」


「そういうお前はそんな小さな皿1枚でいいのか」


「私は、順序を踏みたいタイプでね。まずは前菜から始めるよ」




前を見ると、上司は1枚の大皿に前菜、主菜、炭水化物、汁物をバランスよく盛り付けていた。



「いやぁ、やはり課長のきめ細やかさはここにも現れるんですね。こいつの皿見てくださいよ」



課長は私たちの皿を見比べ「まるで君たちそのものだな」と、微笑んだ。



「いやしかし、何を乗せるかはその人の自由だよ。皿の大きさだってそれぞれ違うのだからね」


そう言うと、また少し微笑んだ。
























































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