第17話 調査部隊発足
今は、工房にて刀身の製造を行っていた。
これは佳奈用の刀だ。
『
今回の調査任務に行くのは前衛が俺一人。万が一があるかもしれない。作成しておいてお守りに持っていてもらおう。
前回同様、魔力による炎で作成している。
今回は少し刃文の付け方を変えようと思っているのだ。
『丁子乱れ』という波紋でU字の波が繋がっているような感じの刃文である。
工房は相変わらず汗の匂いと鉄が焼ける匂いで充満していた。
そこには他にも刀や剣を作っている者達がいて切磋琢磨して製造しているのだ。
そんな中でやっている為、俺が魔法で刀身を打っているのはかなり注目を浴びるのだ。正直少し恥ずかしいが、背に腹は代えられない。
綺麗な刀が必要なのだ。
そうして小刀ができた。傑作だ。
綺麗な曲線、鋭い刃。幻想的な刃文。間違いなく最高傑作だ。
銘入れに入る。
『
意味は将来性のある子の例えなのだ。麒麟の子、鳳凰の雛という意味からきているらしい。
また四文字熟語にしてしまった。ただ単に俺が好きなんだよな。
後は鞘や柄などは『神明』と同じようなデザインにしてもらった。
完成した所で、武岩総長から呼び出しを受けた。
刀をロッカーにしまい総長室へと向かう。
────コンコンッ
「入れ」
挨拶をしながら扉を入ると中には三名が居た。
どのメンバーも見たことがある。
「このメンバーを異世界化調査部隊として任命することとした」
「はっ!」
直立して敬礼し、その呼び出しだったかと納得する。
「各自所属と氏名」
武岩総長が皆を見渡してそう告げる。
「はっ! 治癒部隊!
「遠距離魔法部隊!
「魔法銃部隊!
「刀剣部隊隊長、刀剣班長兼任。武藤 刃だ。よろしく頼む」
選抜されたメンバーを見る。みんな討伐隊の面子だが、程よく年期が入っていていい人選ではないだろうか。流石は武岩総長だ。女性が二人なのも一人だと不安がるからそれを考慮したのだろうか。
「「「よろしくお願いします!」」」
少し笑顔が見えるところを見ると前回の討伐へ一緒に行ったことで少しなじめた感があるからかな。
「このメンバーなんじゃが、実は各部隊長へと打診したのだが、刃がまた動く案件だというと立候補があったらしい」
それは嬉しいことじゃないか。また一緒に任務へ行きたいと思ってくれたという事だろう。
皆の事はちゃんと覚えている。知友は運転をしてくれた。地雷は強力な雷魔法の使い手。円鬼は魔法銃部隊のヤンキーじゃない方の隊員だ。
「皆、立候補してくれてありがとう。しかし、異世界化の謎へ迫る為に行く。危険な任務になるかもしない。それでも行くか?」
「はっ! 私は行きます! 前回、武藤隊長の心意気に感動しました! 行かせてください!」
「はっ! 自分も行くっす! 武藤隊長のパーティの一員として動きたいっす!」
「はっ! ワタクシも行きますわ! 世界を救うお手伝いをさせて欲しいのですわ!」
「みんなの気持ちはよく分かった! みんなで生きて帰って来よう!」
「「「はっ!」」」
高らかに宣言すると一斉に敬礼する。
「出発はどうする?」
「一応明日は準備期間にあてます。こう言ってはあれだが、親しい人との時間を大切にしてくれ」
武岩総長の問いに答えた後、みんなへ訴えかける。
「「「はっ!」」」
遠回しに親しい人との時間を大切にしてくれと言ったが、率直に言うと最後の別れはすませてこいということだ。それぐらいの覚悟が必要になる。
「では、明日は準備、明後日出発だな。そのように辞令を出す。車両もこの前の車両を使えるようにしておく。一応東北基地にも連絡をしておく。寄るといいだろう」
「はっ! 有難う御座います!」
敬礼して総長室を後にする。
廊下で前を歩いていた知友が振り返った。
「武藤隊長って、結婚してるんですか?」
「な、なんだ? いきなり……してないさ。俺はこのまま独身なんだ……」
「そんな! まだわからないじゃないですか! 大丈夫ですよぉ! 私だってまだですし……」
俺がダークモードに入っていると知友は慌てたように取り繕った。
「自分もまだっすよ? っていうかここに居る面子はみんなまだ誰も結婚してないんじゃないっすか?」
地雷がそんなこと言うと皆下を向いて歩いている。そうなのか、あまり歳は離れていない気がしたが。こんな部隊に居たら婚期を逃すよなぁ。
「いやー。そのなんか今回、別れを告げるような親しい人ってそんなにいないなぁなんて思って」
知友は頭をかきながらそう言った。
「自分もっすねぇ」
「ワタクシも親位ですわ」
それには地雷と円鬼も同意した。
(そうか。一人なのはおれだけじゃないんだな! あんな幸せ夫婦が近くにいたから感覚が狂ってただけなのかもしれない!)
そう思うとなんだか元気になってきた。
「それなら、明日、親睦会でもやるか? これから四六時中一緒に居るんだ。少しお互いを知ってた方がやりやすくないか?」
「いいっすね! やりましょうよ!」
「私もやりたい!」
「そう言う事ならワタクシも参加しますわ!」
こうして明日の準備日に親睦会をすることに決まったのであった。
なんだか上手くやれそうな面子な気がしていた。
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