第23話 日本の朝を感じる
次の日、隙間から日が漏れてきて目に当たり、朝を迎えたことに気が付いた。
「んっ……」
瞼をこすり目を開けるとみんなも目を覚ます所だった。
知友はと視線を向けると目をこすっている所だった。
「
「んっ?……あっ、はい! 大丈夫です! ここはどこですか?」
容体はよくなったようだ。やはり寝て休めばあの闇のダメージは回復するのだと改めて確認できた。
「ここは、知友がダメージを受けた所から最短でインターを降りてだな。休めそうな所を探したらお寺があったんで休ませてもらったんだ」
「あぁ。そうだったんですね」
まだ頭が完全に覚醒していないのだろう。目がボーッとしている。
「知友さん、申し訳なかったっす。自分の────」
「────もぉ! 地雷君があやまらないでよねぇ! 私がどんくさかっただけよ! 私こそごめんなさい! 足手纏いになっちゃった」
頭を下げる知友。
皆昨日から頭を下げてばかりだな。
「まぁまぁ。暗くなるな。済んだことだ。今度は早い判断をするように心がければいい。飯を食おう。朝は味噌汁もやるか」
「えっ? 火はどうするんですか?」
目を見開いてポカンとした顔をする知友。そんな顔もするんだな。と少し意外にも思いつつ鍋の下に手を当てると青い炎を手のひらに放出する。
「こうやれば湯は沸かせる」
「わぁ! すごーい! 魔法ってべんりー!」
手を叩いて喜ぶ。その横で今目を覚ました円鬼。
「こんな微調整で魔力を出せるの隊長ぐらいじゃないっすか? みんなできると思わないで欲しいっす」
「ふわー。魔法でそんなことできますの? 武藤隊長は変態ですわね」
急に円鬼がそんなことを言い放ったので、場の空気が凍った。
「な、何言ってるの? 円鬼ちゃん? 隊長が変態なわけないでしょう?」
「ん? 魔法でこんなことできる奴なんて魔法変態ですわよ?」
なぜ二度言ったんだろうか。あんまり変態と言われて少し落ち込みそうになってしまう。
「円鬼はインスタント味噌汁食べたくないのか?」
俺がそう問いかけると、こちらの顔を見つめて首を傾げ、周りの知友、地雷の面々の顔を見てまた首を傾げ、少しすると。
頭を床に付けていた。
「ご無礼を申し訳ありませんわ。許して欲しいのですわ」
その振る舞いで察した。これは寝起きが悪い奴に起きがちな朝の失敗だなと。
「円鬼は朝が弱いんだな?」
「そうなんですわ。夜もなかなか寝付けなかったのですわ」
そりゃこんな床に雑魚寝じゃ寝られないだろうが、これでしっかり寝て疲れを取らないといけないからな。
「まぁ。この旅が終わる頃にはどこでもすぐに寝られるようになってるんじゃないか?」
「そんなものでしょうか? この寝起きの悪さも治したいですわ」
「はははっ。それはどうかな。ほら。飲め。今日はわかめな」
皆に配り一口含むとインスタントながらも味噌の香りと出汁の味が口の中に広がり喉を通り胃に落ちていくのを感じる。体が芯から温まる感じが心地よさを感じる。
部屋の中には味噌の匂いが漂い、日本の朝を思わせる。
「こういう時に味噌汁とか飲むとホッとするよな? 異世界に居た時は味噌がなくてなぁ。恋しかったもんだ」
「なんか似たような豆で代用して自分で作らなかったんすか?」
「地雷はさぁ、大豆からどうやって味噌ができるか全部の工程わかるか?」
少し天井をみて考えて眉間に皺を寄せた。
「ふかしてなんか菌をこうなんとかするんすよね? 端末で調べれば……」
「端末は使えなかったんだ。異世界で使えるわけないだろ?」
「そうっすよねぇ。異世界物の小説みたいにうまくいかないもんなんすね。よくあるじゃないっすか、内政チートみたいな……」
「それができりゃよかったんだがな。俺が知っているのは鍛治だけだ。刀しか打てない。あっちじゃ、それでも優遇されたけどな」
鼻に抜ける味噌の香りを楽しみながらそんな昔話をする。
こんな異世界でのことを話すなんてなかなかないから、変な感じだな。
自分の記憶だけど、別の人の記憶みたいだ。
「剣と魔法の世界だったんすよね? それなら刀なんてめちゃくちゃいいじゃないっすか!?」
「それがなぁ。なかなか質のいい鉄がなくてな。色んな鉱石で試して作ったりしたんだ」
「なんか楽しそうっす!」
そう言われれば、悪くはなかったかもしれないな。
仲間に関しての記憶はないが、あの時の仲間はいい印象しかない。
余程気の合う仲間だったのだろう。
「今思えば、だけどな」
「そりゃ、そうっすよね。魔王っすもんね」
「あぁ。もしかしてだが、このまま異世界化が進めば魔王が出てくる可能性もある」
俺の予想には流石にみんなが目を見開いた。
「えぇっ!? 倒したんですよね!?」
知友がビクビクしながらそう聞いて来た。
「あぁ。けど、やつらはしぶとい。ないこともない。かもしれない。」
「わからないっすもんね」
地雷は冷静に俺の話を聞いている。
円鬼はまだ寝ぼけているのだか目を瞑って味噌汁をすすっている。
「今回の遠征でそれがわかるかもしれないということですわよね?」
急に声をあげたので驚いた。
「あぁ。そうだ。みんなの力が必要だ。俺一人では成しえないと思う。皆で生きて帰ろう」
「「「はい!」」」
気合いを入れて出発し、また秋田へと進むのであった。
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あとがき
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