第24話 ラクさを求めて
出発してからはまた羽生インターから高速に乗って北上した。
今の所はゆっくりと走っていて魔物も出てきていない。
三十分は走っていると思う。
少し前に栃木県へ入ったようだった。
佐野藤岡インターという看板が見える。
そしてその先にはショッピングモールが見えた。
この辺にはそんなに魔物が出ていないのかあまり荒らされている様子がない。
「あそこに寝具とか調達に行こうか」
荷物になるという事で余計な物は持ってこなかった。
しかしこの車は広いから後ろに布団でも敷けば車中泊ができそうだったため、そう提案したのでった。
「布団。欲しいですわ!」
食いついたのは円鬼だった。そりゃ寝られないんだもんな。仕方ないか。
インターで降りて、すぐそこにあるショッピングモールへやってきた。
車が放置されている物がちらほらある。
向かって左側の玄関に横づけする。
もう電気もついてもいないので、ライトを持って入る。
誰もいないショッピングモールというのもなんだか不気味だな。
中へ入っていくと生鮮食品などが並ぶスーパーのエリアだった。
そこの棚にはまだ商品が陳列されたままになっている物もある。
食べ物や飲み物は誰かが持って行ったのだろう。綺麗に何もなくなっている。
左の通路を見ると『酒』という看板が見えた。
「なぁ。ちょっとあそこみないか?」
皆にも見るように促した。
こういった緊迫した状況には嗜好品が欲しくなる時もある。
「いいっすねぇ。見てきましょう」
「仕方ないですねぇ。男ったら」
「ワタクシも気になりますわ」
賛成が多数のため酒コーナーに行く。何もないかとは思っていたが、ほぼ何もない。しかし、中には残っている物もある。
「炭酸飲料はほぼないっすねぇ」
「あったとして炭酸は抜けてるだろ? それより、焼酎が残ってるぞ」
「自分苦手なんすよねぇ」
「ワタクシいけます」
円鬼はいける口らしい。
「円鬼、意外にノリいいな?」
思わず突っ込んでしまった。なんか今日の朝からはっちゃけてるっていうかなんというか。素を出してる気がする。
「ワタクシ、気を遣うの苦手で、なんかもう朝のことがあったからいいかなって思ったんですわ」
つまりどうでもよくなったということだな。
まぁ、気を張っていても疲れるだけだ。
適度に気を抜いていた方がいい。
「いいと思うぞ? なっ?」
他の二人にも振る。
「いいと思うっす!」
「気を使うのめんどうですもん!」
やっぱりこの三人は楽でいいな。
焼酎を数個袋の中に入れ持ち帰る。
まだ入り口に近いので一旦車に乗せた。
「その流れでなんすけど、苗字めんどくないですか? 隊長も、刃さんでいいっすか?」
「なんだ? そんなこと気にしてたのか? 呼び方なんてなんだっていい」
俺がそう言うとそれが合図となったのか、円鬼と知友も口を開いた。
「じゃあ、私は
「自分は
「ワタクシは
だったらもっと早くいってくれればいいのにとちょっと不満を思ってしまった。
いかんな。こんなに打ち解けてくれているのに。
「俺も刃で構わん。隊長っつうのもむず痒いしな」
「じゃあ、みんな名前にしましょう! あぁー! なんか急に心が楽になった気がする!」
そんなことを言いながら千紗はショッピングモールの中心部へ走っていく。
奥に行くと寝具が見えた。
「あっ! あったわよ! 寝具!」
一目散に千紗が走り、冬華がその後に続いていく。
あまり持っていかれていなかったようで結構余っていた。
「うわー埃が!」
そういって払い除けた布団のしたは綺麗な物だった。
「あぁー。柔らかい。一日たっただけなのにこんなに布団が恋しくなるなんて思わなかったですわぁ」
一応訓練とかで三日間とか車中泊とかしたとおもうんだが、その時はどうしたんだろうか。
状況が切迫しているから余計にそうなのかもな。
布団も大丈夫そうなものを持ち出して車に乗せる。
なんだか車の後ろが快適空間になっていく。
(いいなぁ。後ろの席の二人。くつろげるじゃん)
「刃さん、今。いいなぁと思いましたわよね?」
その問いにピクッと眉と口を動かしてしまった。
「しょうがないですわねぇ。たまには後退して差し上げてもいいですわよ?」
(なんで上から目線なんだよ。いきなり素が凄まじいんだが)
「あぁ。たまには後ろの席にしてくれよ。後ろがこんなに快適なら少しスピードだしてもいいかもなぁ? 千紗?」
「そうですねぇ。私はどうせ後ろには回れませんし! 運転してくれてもいいんですけどねぇ!?」
千紗の迫力に後ずさる冬華。
「じ、冗談ですわ。みんなで寝るのが良いですわ!」
そそくさとショッピングモールに逃げていく。
皆で後を追った。行った先では服を物色していた。強い精神である。
俺も持ってきたの以外に下着とかTシャツとか。使えそうなものを貰っていく。
袋に詰め込んでいると奥から物音がする。
「奥に何かいるぞ! 気を付けろ!」
ブラックウルフのはぐれだった。
一体で生きていたのだろうか。
こちらに必死に威嚇してくる。
「魔物は容赦しない!」
俺は駆けていくと攻撃を紙一重でよけ、一刀両断した。
(嫌な役割だな。だが、判断の遅さが被害を招く場合もある。仕方がない)
少し暗い気持ちになり、そのショッピングモールを後にしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます