伝えたい……

篝火

どうしよう

 その人を初めて見たのは夏が傾きかけた時である。

 雨を見上げながら雨宿りしている姿が目に飛び込んできた瞬間、ナニかが身体中を駆け巡るように熱くなる。


「……?風邪引いちゃったかな?」

 今まで感じたことのない不可思議なモノに少し戸惑いながらも、その人を見つめていた。


「なんで、目が離せないんだろう?」

 どのくらい経ったのか、雨はいつの間にか小降りになってきたが、止む気配はまだしない。


「……、あ、あの……!」

「!?」

 勇気を振り絞り近付いて話しかける事にした。

「あ……あの……その……」

「え~と、なんでしょう?」

 声を掛けた私に気づいた彼女は、私の挙動不審な姿に困った顔をしてしまう。


「あの、コレ使ってください!」

「えっ!?」

「ごめんなさい、困ってそうでしたので、もし迷惑でなければこの傘を使ってください!」

 いきなりの発言に驚いた彼女が私と傘を見比べる。


「え~と……大丈夫ですよ、多分もうすぐ止むと思いますから……」

 見ず知らずの私にいきなり声を掛けられたので、どうしたら良いのか分からず苦笑いを浮かべながら彼女が答えた。

「気まぐれな天気なので、弱くなったと思ったらまた強くなることもあります!」


 そう言って無理矢理彼女に傘を渡した。

「あ……ありがとう……ございます……」

 目を瞬かせてお礼を言う彼女に微笑む私。

「え~と、ではお気をつけてください!」

「は……はい……」


 そう言って、彼女の瞳と視線が合わさった時……

「キレイな水色の宝石みたい……」

「あっ!す……すみません!気持ち悪いですよね!」

「そ、そんなことはありません!とてもおキレイですよ!」


 自分自身で何を言っているのかわからず、その瞳に吸い込まれそうになりながらも、私の動悸が高鳴り鼓動が早まり呼吸が難しく感じる。

「////////!?」

「えっと……/////////」

 そして、お互いに頬を染めながらうつむくのであった。


 これが私と彼女の出会いであり、まだ見ぬ未来に向けて駆けるスタートラインに立った瞬間である。


               (完)

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