償いと怒り

江葉内斗

償いと怒り

 ある夫婦が言い争いをしていた。



 「あなた、もう三日ですよ。そろそろ許してあげたらいかがですか」



 「駄目だ! どんなことがあろうと、絶対に許すわけにはいかん!」



 「三日間ですよ!? 家の前で三日間も土下座するなんて! もう十分じゃないですか!!」



 「奴が何をしようと、私の宝物が返ってくるわけでもないだろう!!」



 「そうですよ。それなのにあの人はあんなに誠意を見せようとしているのです! かわいそうに、昨日は大雨でした! このまま放っておいたらいつか死んでしまいます!!」



 「奴が死のうが何だろうが、奴の勝手だ!!」



 「なんてことをおっしゃるのですか!! 確かにあなたがお怒りになるのも無理がなかったとはいえ、あそこまで一生懸命に許してもらいたいと思っている人に向かってそんなことを言うなんて!! それにあなた、さっきから宝物宝物って言ってますけれど、



 「ふざけるな!! あれはイベントでしか手に入らない非売品だぞ!!! 儂の大事な『Zガ〇ダム』を奴め、壊しおって!!」



 「あれはわざとじゃなかったじゃないですか!! たまたま椅子の足に引っ掛かって転んだら、あなたが手入れしていたガ〇プラを踏んだんじゃないですか!! 大体そんなに大事なものならお客様の前で出さないでください!!!」



 「何を言っている、宝物だから見せたのだ!! 彼を真正のガ〇ダム好きと認めたから見せたのだ!!」



 「何が真正のガ〇ダム好きですか!! あなたはプラモデルばっかり集めて、肝心のアニメは見てないじゃないですか!!?」



 「きっ……貴様!! 言ってはならんことを言ったな!!?」


 

 「そのうえあなた、Zガ〇ダムやガ〇ダムユニコーンばっかりで、他のガンプラなんて集めたこともありませんでした!! それどころかエアリアルに向かって『あれはガ〇ダムじゃない』などとおっしゃってましたよね!!?」



 「貴様ぁ!! 私のやり方を侮辱するか!! もういい、離婚だ!!!」



 「結構です!!!」



 その後、土下座の男は通行人に発見され、ぐったりしているところを緊急搬送された。



【償いと怒り】:完

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