第2話 狂犬少女は勇者を拾う
「これが最高級焼肉店の味…」
味わったことのない料理達に舌鼓を打ち、満面の笑みを浮かべながら店を出る怜。
バイクに乗り込み家へ帰ろうとすると店の前で女の子が倒れていた。
「君!大丈夫?」
「…なかが…て…」
「どうしたの?」
「おなかが…すいて…」
ぎゅるると可愛くないくらい大きな音を響かせる女の子。
「ちょっと待ってて!」
流石に焼肉店に戻るわけにはいかないので付近のコンビニに入り、たくさんのおにぎりと飲み物を買った。
戻ると女の子は今にも死にそうな顔でこちらを見つめていた。
「はいこれ!食べていいよ!」
「…!ありがとう!」
口いっぱいにおにぎりを頬張り、飲み物で流し込んでいく。
「あひあおう…あひあおう」
泣きながらおにぎりを詰め込む姿は綺麗な女の子が、していい顔ではなかった。
そう、女の子はとても綺麗であった。
中性的で凛々しく整った顔に金色に輝く髪。
お風呂にでも入れて整えてあげれば女の子達が騒ぎ出しそうなほどだ。
「どう?落ち着いた?」
「本当にありがとう。この恩は一生忘れない」
「そんな、別にいいよ。それよりどうしてこんなところで倒れていたの?」
「それは…少し長くなってしまうのだが…」
「なら家で話そっか、服も汚れてるし体も洗っちゃお」
「それは申し訳ない」
「いいっていいって、ほら」
手を引いて連れ出す。
「っとと、その前に名前!聞き忘れてた」
「そうだね、僕の名前はカリン、カリン・イドニア。君の名前は?」
「私は星見怜!怜って呼んでね」
「レイか、よろしく」
「よろしくね!」
自己紹介を終えたのでバイクの後ろに乗せる。
「これヘルメットね」
そういって首輪を渡してボタンを押す。
するとシュッという音と同時に透明な膜が頭を覆う。
「なんて便利な」
「カリンの惑星にはないの?」
「あぁ…この惑星はすごいな」
「これだけじゃないんだから!いつか案内してあげるね」
バイクが少しだけ中に浮くとそのまま走り出す。
「うぉ!速いな!」
「でしょー」
慣れていないのかギュッと強く抱きしめてくる。
背中に感じる確かな柔らかさについつい自分のものを見る。
(私だっていつかは…)
悲しい思いを振り切るように家へ向かった。
「到着っと。さ、入って入って」
「お邪魔します」
部屋に入るとあまり着飾った様子はなく、巨大なコフィンとトレーニング器具がありありと主著していた。
「あんまり物面白い物はないよ」
キョロキョロと物珍しそうにするカリン。
「いや、そんなことはないよ。どれも僕の惑星では見ない物ばかりだ」
「そうなんだ。カリンの惑星がどんな所が気になってきたよ。」
家にある物は特に珍しいものでもなかった。
カリンはとても田舎から来たのだろうか。
改めてカリンを見る。
ここら辺では見ない服装をしている。
とても汚れていた事を思い出した。
「そうだった!カリンこっち来て」
「ああ、すまない」
脱衣所に案内する。
「服は脱いでこの穴に入れてね。5分もすれば綺麗になるから」
家のは最近型ではないが、洗浄、除菌、そして少しの香り付けを完備したオーソドックスな物だ。
「じゃあ私は向こうにいるから何かあったら呼んでね!」
「ありがとうレイ。初対面の僕にこんな良くしてくれて」
「いいよ別に!カリンの事が気になっただけだよ」
カリンが浴室に向かう。
「まだお腹空いてるだろうし今の間にご飯作っちゃお!」
おにぎりを一瞬で食べていたんだ。きっとしばらく食べていなかったのだろう。
あまり料理は得意ではないので自動調理機に任せる。
消化にいいであろう、うどんにしよう。
自動調理機のボタンを押して入れ物の準備をしていると
「レイ、ちょっといいかい?」
壁に身体を隠しながらカリンが声をかけてくる。
「どうかしたの?何か足りなかった?」
「そうではないんだ。ただどれも見たことないものばかりでどうしたらいいか分からないだ」
どうやらシャワーの使い方が分からないらしい。
使い方を教えるために近づくと彼女の麗しい素肌が覗かせる。
大きな胸に引き締まった身体は理想的と言えるだろう。
「どうかしたかい?」
「い、いや!なにも!」
危ない。見惚れてしまった。
一通り教えてリビングに戻ったが、浴室からは何度も「きゃっ」と可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。
Virtual Interplanetary War〜狂犬少女は貧乏勇者買う〜 玉簾蒼 @tamasudareao
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