Virtual Interplanetary War〜狂犬少女は貧乏勇者買う〜
玉簾蒼
第1話 新チャンピオン誕生
1000年前、人類は宇宙へ旅立った。
銀河の果て、そこには我々とは別の人類が存在した。
獣人、エルフ、ドワーフ、御伽話や創作で見たような彼らは宇宙から伝わって来たものであった。
交流を重ね、様々な発展を遂げた。
そして現代ーー
惑星、種族を超え、一つのゲームが一世を風靡した。
「Virtual Interplanetary War」通称VIW。
突如として現れたこのゲームは仮想惑星を舞台に繰り広げられる。
ーーーーー
「おりぁぁぁあ!」
叫び声が響く。
それと同時に湧き上がる歓声。
「おいおい、嘘だろ」
「ほんとにやりやがった」
コロッセオの真ん中、全身を鱗で覆い、巨大な翼を背に持つ巨躯の男が倒れている。
その傍には赤い髪を揺らし、息を切らしながらも拳を突き上げる少女がいた。
「やった!やってやったぞ!ついにチャンピオンを倒したんだ!ははっ!」
上機嫌にはしゃぐ少女は突如、パタリ倒れ込む。
「はぁ…もう動けないや…」
見上げる空は青く、感じたことのない達成感に包まれながら満面の笑みを浮かべる。
アナウンサーらしき女性が近づいてくる。
「レイさん、今のお気持ちは!」
向けられるマイクに向かって叫ぶ。
「私がコロッセオ最強だーー!」
わっはっはと笑いながら叫ぶ姿は年相応に見える。
拍手と歓声の轟音に包まれながら彼女は満足そうに目を瞑った。
「んんー疲れた!」
白いコフィンの中から身体を伸ばしながら出る。
休憩のためにVIWをログアウトし、冷蔵庫へ向かう。
「へへーん、ふふーん」
コロッセオで勝利した彼女ー星見怜はだらしない笑顔を浮かべながらいちごオレを飲む。
「勝ったのよね!あのヴァーハルトに!ふふふっ!」
コロッセオのチャンピオンヴァーハルトは、圧倒的な硬さと力強さに加え、空中からのブレスで天下無双を誇っていた。
何度も何度も挑戦してやっと掴み取った勝利。
嬉しくないはずがない。
「それに大金が…ぐへへ…」
VIWのコロッセオでは公式に賭け事が行われてる。
オンラインでもその場でも簡単に賭けられるものだ。
原則として八百長を防ぐため、挑戦者は自分にのみ賭けられる。
チャンピオンであるヴァーハルトはサービス開始から1年間、無敗を誇っていた。そのため、賭け者が少ないと思うがそうでもない。
オッズが安定しているからこそ大穴を狙う者も多いのだ。
挑戦者は勝つつもりでくるので自分に賭ける者が多く、オッズが下がりすぎないのも理由の1つだ。
もちろん私も自分に入れた。コツコツバイトして貯めた100万円を全額投入した。
無名のしかもただの人間に投票するものは少なくオッズは100倍であった。
つまり
「今日から私は自由だ!」
腕輪を押し、空中に浮かんだ画面にある金額を見る。
1億円。1億円だ。
18歳には持ちすぎる大金である。
「美味いもの食べるぞー!」
そう言って部屋を飛び出す。
家の前のバイクに乗って街へ繰り出した。
「待ってろよ肉ー!」
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