巧みな心理戦のぶつかり合いに引き込まれる大人の青春物語

幼いころ、とある事件の被害者となり心にトラウマを負った女性「花緒」。
唯一の心の支えは2.5次元俳優である推しの存在。
だが彼は引退してしまった。

退職し、地元に帰ってきた花緒は普通のアパートで一人暮らしを始める。
だが隣の部屋の住人こそ、引退宣言をして一般人に戻った元「推し」であった――

隣の家に推しが住んでいるというと、
一見ご都合主義のラブコメを思い浮かべるかもしれませんが、全く違います。

心に傷を負った者同士、他人の視線に対して過剰に反応しながら、
少しずつ距離を縮めていきます。
描かれるのは恋愛ではなく再生の物語かもしれません。
傷ついた者同士の邂逅はヒリヒリとした心理戦にも似て、
少しでもバランスを崩したらたちまち壊れてしまう砂上の楼閣のようにはかなく、
手に汗握って読んでしまいます。

繊細な登場人物たちが心の琴線に訴えかけてくる小説です。
しっかり向き合って読んでください。

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