第5話 欲しがります勝つまでは
あれから、数ヶ月、私は北の修道院に収監された。
実質的な刑務所だ。
今は、何月何日かも分らない。
奉仕活動、祈る。祈る。掃除、奉仕活動、
単調な毎日だ。
「女神の僕、13番、来なさい。面会が来ています」
「はい!指導シスター殿」
伯爵様が迎えに来た?
いえ、人の悪意の中で生きた私には分る。
応接室にいたのは、メアリーだ。
「この、よくも、ノコノコと」
「女神の僕13番、ムチ打ち!」
「ヒィ、有難うございます」
バチン!
一回叩かれたここでは日常茶飯事だ。
モグ、モグ、モグ
「美味しいの~~~~」
メアリーはステーキを食ってやがる。
欲しい。欲しい。欲しい。
「スザンナは素質あるの~~~悪魔って言ったの。私の本性を見抜いたの。私は悪魔なの~~」
「それが、どう・・いえ、如何しましたか?」
「テストするの。ほしがりの心を見せるの~~」
「あのメアリー様、ステーキを少し分けて下さい」
「何のためになの~~~」
「毎日、薄いスープとパンで、お腹ペコペコでして・・」
「失格なの~~~~~」
「ヒィ」
やつはモグモグ食べて、帰って行きやがった。
「指導シスター殿、あの方は何者ですか?」
「知らない方がいい・・・それよりも今日は魚が出るぞ」
「魚!有難うございます!」
☆ドングリ良い子孤児院
「はあ、はあ、はあ、はあ、あの顔、ステーキを欲しがるスザンナの顔、たまらないの~~~」
・・・私はメアリー、人は欲しがり義妹のメアリーと呼ぶ。
スザンナに聞いたが、あたしでもほしがりの心の正解が出ていない。
無心のおねだり。
人にあげるためのおねだり。
しかし、スザンナの物欲のおねだりは、頂けない。
私の母も物欲のおねだりだった。公爵家の庶子、公爵の寵愛をいいことに、
義姉のものを欲しがって、欲しがって、遂に、婚約者、王太子を欲しがって、
公開婚約破棄をしやがった。
父は馬鹿だった。ただの馬鹿だった。
しかも、顔がいいから始末におけねえ。
二人仲良く廃嫡、追放、
市井で私が生まれたってわけ。
コンコンコン
「どうぞなの~~~」
「メアリー孤児院長付き、あの、私宛てに、差出人不明で、多量のドレスと宝石が届きました。これは、私が実家で持っていたものです。どうぞ孤児院の運営費に使って下さい」
「はにゃ、いいの~~、アリシア様、無罪が証明されて、実家から帰還要請が来ているってきいたの~~~」
「大丈夫です。お母様の形見だけは取ってあります。
ところで、シスターとしての修行が終わったら、ここで、メアリー様と働きたいですわ。人の心は移ろいやすもの。例え、家族でも、
私、考えたいのです。答えが出るまで、何年かかっても・・・」
「分ったの~~~」
私は父の馬鹿は受け継いだ。
馬鹿は勉強すれば、何とかなるが、
母の品性の無さだけは、どうにも出来なかった。
人の物が欲しくて、欲しくて、たまらない。
しかし、奪えば満足する。物に執着しない。質がわりい。
ここにいれば、頂き義妹、義姉に奪われて、追放されてくる令嬢の話が聞ける。
腐った魂の頂き令嬢の話を聞いて、ワクワクしたものさ。
あいつらをはめて、おねだりして、物を奪えれば、
誰も不幸にならない。
ただ、頂き令嬢が修道院に行くだけ。
「はあ、はあ、はあ、スザンナのあの顔、気持ちいいの~~~」
ドン!
「ちょっと、秘書室で変な声だしてはいけないんだからね!ところで、メアリー、王家から養子の打診が来ているんだからね!
形だけは、孤児院で頑張る健気なやらかし元王太子の子女だからね!」
「違うの~~王家、姫がいないの~~~、政略で必要なだけなの。ピンクブロンド院長!」
「ピキー、私はリディアなんだからね。髪がピンクなだけだからね!」
「先生なの~~おねだりの先生なの~~秘技、階段落ち、上手く行ったの」
「だから、あれは、受け身なんだからね。階段を落ちるためにあるのじゃないんだからね!」
ここに、いれば、天然の頂き師匠がいる。
陥れられて、追放された令嬢から、魂の腐った頂き令嬢の案件が来るに違いない。
「ヒヒヒヒッ、アハハハハハ、なの~~~」
「ちょっと、気持ち悪いんだからね!」
メアリーは忙しい。頻繁に孤児院を空ける。
それほど、世の中、無実の罪で追放される令嬢が多いのかもしれない。
欲しがり義妹メアリー~~欲しがりの心とは? 山田 勝 @victory_yamada
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