森のくまさん

宇宙(非公式)

第1話

 もりの少女

 

 森。少女。足音。そして、掴み合う男と熊。

 片方の大男は叫んだ。

「逃げて、お嬢ちゃん!」

 少女は言われたままに走った。しかし、暗い道だ。少女は転んでしまう。しかし立ち上がり、また逃げた。ところが、熊は追いかけてくる。

「忘れ物だよ」

 熊はそう言うと少女を殴り、引く糸が切られたかのように、彼女は倒れた。熊の手には白い貝殻の、小さなイヤリングが握られている。

 

 小田大輔

 

 目を覚ました。体の節々が痛む。どうやらいつの間にか、床で眠っていたらしい。だんだんと意識の輪郭がはっきりしていき、視界も鮮明になる。そこは床じゃなかった。さらに言えば、家でもなかった。森だ。木の根を枕のようにして、俺は寝ていた。しかも近くには、見知らぬ大男と少女が寝転がっている。肌の白さから推測すると、北欧の方々だろうか。

「そいつらは死んでるよ」

 俺は驚きを露わにして表した。声のした方を向くと、妖しく笑う少年が切り株の上に座っている。

「僕の知り合いがやったんだけどね。彼はそれを君になすりつけるつもりだよ」

 今度は困惑を露わにした。少年はまた口角を釣り上げて言った。

「そんな顔をしないで。私は敗腐はいふ。見方によってはキミの味方だよ」

 どうすればいいのだ、というようなことを敗腐と名乗る少年に尋ねる。それは行くべき所を訪ねるのにも似た行為だ。

「うーん、そうだね。そこに大男がいるでしょう?そいつに、殺人の罪をなすりつければいいんだよ」

 罪を着せる。その言葉は俺の耳では原型を留めていなかった。つまり、少年は冤罪を作ろう、ということだ。

「心中、と言うことにしたらいいんじゃない?」

 言われるがままに、自分が腐っていくように、少年の言うがままにことが進んでいく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

森のくまさん 宇宙(非公式) @utyu-hikoushiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ