第2話 散歩

一人の人が歩いている。辺りには廃墟と化し倒壊したビルや植物が乱雑に生え、廃墟と化した建物から風の音が聞こえる。この場所は、まだ、人間が地球の覇権を握り、より繁栄した証の場所。だがもう見る影もない。ただ、獣の棲み家、植物の苗床となっている。

ただその人は、その危険な場所を何でもないように歩いている。まるで散歩をしているかのように。


その人は傭兵だ。ただ、自分の思うように気まぐれに旅ををするただの傭兵。他の傭兵と違う点と言えば一人だということ。ただ一人でこの世界を旅しているという点だ。


その傭兵はここに来てから1週間がたった。毎日、この廃墟と化した都市を探索し、獣や植物を観察する。ただそのことをずっとしていた。

傭兵にとってそのことは苦ではなかった。むしろ楽しんでいた。新しい場所に到達し、新しい獣はいないか、新しい発見はないかと探索していた。

ただ今その傭兵は退屈していた。どこを探索しても新たな発見はなかったからである。少し遠くに行っても、地下にいっても見つかるのはどこにでもいる獣だけ。固有の獣や本が見つかるのを期待していたのにこれではと思っていた。

傭兵はもうこの場所にはめぼしい物はないだろうと今日で探索を最後にし、次の日、また旅しに行こうと思っていた。


傭兵はまだ崩壊していないビルの屋上に登り辺りを見渡す。すると、遠くの方で獣が集まり何かを追っているのが見えた。その獣は群狼。どこにでもいる群れで過ごす獣だ。

傭兵はただのよくある狩りだと思い見ていた。獲物はなんだろうと思い目をやるとそれは数人の人であった。傭兵はここ1週間人を見ていない。新たにこの都市に来た探索者や傭兵と思った。

ただ、よく見るとその数人はけがを負っているようであった。腕や足からは血がでており、今にも追いつかれそうであった。傭兵はよくあることだと思いただ見ていた。群狼に追いつかれ手足を食われ、ただ無残に殺される。その様子をただ見ていた。


傭兵はビルから降り明日の準備をしよう再び歩き出した。この世界では命はすぐに失われる。傭兵にとってあの獣たちを殺すことは簡単であった。しかし、傭兵は助けなかった。それはなぜか、それは傭兵にとってどうでもいいからである。他人を助けるなんて面倒くさいの一言に限る。しかもけがを負っているのならなおさらだ。助けたところでメリットは少なく、デメリットの方が大きい。


次の日、傭兵はこの廃墟と化した都市から出発した。世界を見るために。

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