第10話 ダマリャーノ、ピザが食べたい
万能AI
超早い。
早すぎて、時々夜だ。
季節を問わず、日が昇る前には目覚める猫代は、本日も三時半に活動を開始した。
老人ぽいが製造年ピッカピカの頃からの行動パターンなので、修正はきかない。
ちなみにダマリャーノは、まだ寝ている。夜もさっさと寝ている。朝は起きない。気がつけば昼寝している。
こやつは猫生の三分の二くらいを、寝て過ごしている。実は半分死んでいるんじゃないか。
一通りどころか、ふた通りルーティンをこなしたところで、ついに猫代は行動に出ることにした。
日は、はや中天を目指しつつある。事は風雲急を別に告げてはいないが、いくら何でも寝過ぎだ。
「起きなさい! この駄猫がぁ!」
「うん、我、今日の夜はピザが食べたい」
寝言はネティエ、懐かしい。
いや、起きろネッコ。休日のたびに目玉が溶けるほど寝おって。
「ピザを食べたければ、朝八時までの起床を要求します」
「我、十二時間は寝たい。だって猫だもん」
本当に死んだように十二時間寝るからタチが悪い。
それにしてもこの駄猫、ピザを作る労力が分かっていない。まず、材料を買い集め、ソースを作るのに五時間はかかるのだ。
「いや、あのトマトソースの作り方をYouTubeで紹介したイタリアンのシェフ、あんなくっそ面倒くさい工程を真似する変態は二十人くらいしかいないと思って公開したと思うにゃ」
変態いうな、しばきますよ。
「ありとあらゆる材料を微塵切りにした挙句、寸胴鍋で四時間煮詰めるとか素人がやることではないのにゃー。超美味いけど」
ケチャップに粉末バジルを混ぜただけで、ピザソース完成と言い張る猫は黙ってらっしゃい。
「作ってあげるから、黙って買い物にを付き合いなさい。こらっ、布団に戻ろうとするな!」
「だってオフトゥンが我を呼んでいるのにゃ。猫は冬眠する動物にゃ」
「……脱出ポッドに入れてあげますから、宇宙猫漂流記でもやりますか?」
「銀河漂流バイファムのオープニングは格好よかったにゃー。SF好きには堪らん感じで。本編見たことないけど」
見てないんかい!
どんぶらこ。
どうして、よりによって面倒くさがりもここに極まれりの猫に、とっ捕まってしまったのか。
ふうぅと大きなため息をつきつつ、ピザ生地を練る猫代であったが、気がつけば、またダマリャーノの姿が見えない。
「十時に起きて、昼寝すんなーーーー!」
「春になったら起きる……さらばともよ、さらばとうきび」
ダマリャーノ家、休日の日常。
猫代さんはお料理上手。
ダマリャーノ、黙って皿を洗うのみ。
ご馳走様でした。
猫は空なんか飛ばない 沖ノキリ @okinokiri
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