ガラスの瞳!!!

立花 優

第1話

しまった。遅刻だ。




いつものバスは、もう、出発してしまっていたのだ。




今からじゃもう間に合わないが、それでも、次のバスに飛び乗った。




何しろ、もともと、遅刻の常習犯だ。いつも、担任の教師に、名指しで、怒られる。




もう、慣れっこには、なっているのだ……。




しかし、来年は、いわゆる高校受験が待っているのである。




例え、遅刻しても、欠席するよりは、多少はマシだろう。




ようやく、学校に辿りついて、おそるおそる、教室のドアを開けた。




先生の大きな怒鳴り声が聞こえる。


まあ、しかし、それは、想定内なのだ。




しかし、クラス内の異様な雰囲気に、即、私は、気が付いた。




何と、級友の全員の「瞳」が、人間の「瞳」では無くなっていたのだ。




敢えて言えば、マネキン人形のような冷たい「瞳」に、全員、置き換わっていたのだ。




受験勉強が、クラスメートの「瞳」を、「ガラスの瞳」に変えたのか?




これではまるで、カフカの小説『変身』のようではないか?




何とか這うようにして席に着いて、隣の席の女の子に、手鏡を借りて、自分の「瞳」を見てみた。




何と、自分の瞳も「ガラスの瞳」だった。

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