第76話 Too much homework in Japan
確か次の夏祭りの予定は、一週間後。それまではゆったりのんびりダラダラと夏休みを満喫……なんて、さすがにそれは許されない。
なぜなら、俺たちは高校生。そう……夏休みの宿題というモンスターを倒さなきゃならないのだ。
しかも夏休み明けにはテストもある。ここで油断していると、見事に赤点を取りかねない。それだけは回避しなくては。
……九条は大丈夫だろうけど、萬木はちゃんとやるのだろうか。話を聞く限り、宿題すらしなさそうだけど。
キッチンで皿を洗ってそんなことを考えていると、さっきまでゴロゴロしていた奏多が、俺の隣にやって来た。
「手伝うよ」
「気にせず休んでればいいのに」
「気にするよ。一応、この家の家主はぼくなんだしさ」
それもそうか。逆なら、俺だって気にする。
洗い物の水気を奏多がタオルで拭っていると、にやにやと口角を上げて俺の腕に引っ付いて来た。
「それに、こうしてるとなんだか夫婦みたいじゃない?」
「気が早いな。何年後だよ」
「え? 高校卒業したら結婚するんじゃないの?」
「いやいやいや、ダメだろう、それは」
いくらなんでも早すぎる。結婚するなら、まず仕事に就かないと。一応進学希望だから、せめて大学を卒業してからだな。結婚は、ちゃんと責任を持てるようになってからしたい。
でも奏多は納得していないのか、むすーっとした顔で口を尖らせた。
「そっかぁ……ぼくは卒業と同時に結婚する気満々だったから、ちょっと残念」
「将来のことを考えたら、大卒の方がいいだろ?」
「そうだけどさぁ。25歳までに子供は3人くらい欲しいなーって思ってたんだよね」
もうそこまで考えてんの!? なんか、俺より先のこと考えてない!?
子供……子供かぁ。俺も子供は好きだけど、3人かぁ……。
ひたすら洗い終わった皿を拭いている奏多に目を向ける。
……奏多が子供をあやしている姿……想像しただけで、来るものがある。というか正直、めっちゃいい。興奮する。
確か女性って、子供を産むと胸も大きくなるとか聞いたことがあるような。奏多もそうだとしたら……今以上にでかくなる、と? それ、どうなっちゃうんだ……?
「京水、顔がやらしい」
「そ、そんな訳ないだろ」
「ぼくのおっぱい見てたでしょ。たーくさんしてあげたのに……えっちー♡」
うりうり、と肘でつつかれた。否定はしないけどさ。
「洗い物終わったら、次はベッドでする?」
「いや、しない。宿題やんなきゃ」
「ほぎゃ!?」
……もしかしてこいつ、忘れてたか? 胸を抑えて打ちひしがれてるけど。
「うぅ……Too much homework in Japan(日本の宿題、量多すぎ)」
「あぁ、そうか。アメリカって宿題ないんだっけか」
「うん……だから自分の好きなように時間を使えるんだよぅ」
およおよと涙を流す奏多。確かに日本って、宿題の量が尋常じゃないよな。年々増えていってる感じがするし。
「お願い京水、手伝って……!」
「そう言われても、俺も全然手を付けてないぞ」
「なんでもするから、ね? お願いします!」
ほう。今、なんでもするって言った?
……って、ダメダメ。去れ、煩悩。今のは邪すぎる。
「こほん。あー……一緒にやるって条件なら、いいぞ」
「ほんと!? ありがとう、マジ助かる!」
わっ。ちょ、いきなり抱き着いてくるな。危ないだろ。
「たはは。持つべきものは大親友だねぇ。これ、一人だったらと思うとゾッとする」
「お前のことだから、夏休み最終日までまったく手を付けてないだろうな」
「うわ、想像できる。ぼく、宿題とかほんっとーに苦手なんだよね~。それよりも遊びを優先したい」
気持ちはわかる。俺も宿題なんてなかったら、毎日遊んで夏をすごしてただろうし。
けど、将来奏多と結ばれるためには、少しでもいい成績を残して、いい大学に入って、給料も安定させないとな。やることはたくさんあるんだ。気合い入れないと。
あれもこれもと考えていると、奏多がまた引っ付いて来た、今度は、全身を擦り付けるように。
「奏多?」
「……ぼくもいろいろ考えてたと思ってたけど……京水も、ぼくのこと考えてくれてたんだね。ありがと、愛してくれて」
「っ……と、当然だろ。最愛の彼女なんだし……」
「えへへ♡」
すりすり、と擦り寄ってくる。可愛いけど、そんなに擦り寄られるとまたその気になっちゃうんだけど。
「あ……♡ ……する?」
「……する。でも明日はちゃんと宿題するからな」
「♡♡」
はぁ……男子高校生の体力、舐めてたわ。
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その体で『男友達』は無理があるだろう!? 赤金武蔵 @Akagane_Musashi
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