第2話 クロ
スヤスヤと眠る少女。おおよそ中学生くらいだろうか? ちょっとウェーブのかかった黒髪に可愛らしいカチューシャを付けている。狐火も可愛い部類だが、この子も可愛い。狐火は活発的な感じに可愛らしいが、この子は大人しそうでまるでお人形のようだ。じっと見てるとつい庇護欲がわきそうだ、って俺は何を言っているんだ。
「……ん」
布団を剥がした事で寒くなったのか目が覚めたようだ。寝ぼけ眼ではあるが、こちらを見てくる。
「「…………」」
何も言わないんかい!?
まぁこいつが誰なのかは大体わかるが。
「クロか?」
俺の問いに頷く。雰囲気というかなんというか、ぶっちゃけ繋がってるのがわかる。これは狐火も同様で、家族というべきか、それに近い存在だ。
「それにしても何でクロまで人になってるんだ?」
俺の問いに無言のままである。あれ、聞こえなかったのか?
俺が首を傾げるとそれに合わせてクロも首を傾げた。俺は試しに逆側へ首を傾げるとクロも同じように首を逆側に傾げ始める。
どういうことやねん。
うーん、と唸っていると不意にクロが抱き着いてきた。何となく振り払う事も出来ず、そのまま抱きかかえてしまった。
「あぁーーーーーーーなの!!」」
そして急に後ろで騒ぎ出す狐火。混乱の極みである。
「狐火? 急にうるさいぞ」
耳元に近い場所で叫んだせいで耳元がキーンとしてしまった。
「あるじさまにくっつくのはきつねびだけなの! くろ! ずるいなの!!」
後ろを振り向くとクロに向かって指をさしている狐火。どうやら狐火はこれがクロなのだとわかっているらしい。
「……ご主人様はクロの」
そう言うと、狐火に見せつけるようにぎゅっと抱き着く力が強くなった。それに伴って、柔らかい部分が存在感を増し、俺の脳を刺激する。それに何やらいい匂いもしてくる。
いかんいかん。狐火も怒っているし、クロをとりあえず離す。ちょっと残念そうな顔をしているがここはとりあえず無視だ。このままじゃ話が進まない。
「ふぅ、クロじゃ話にならん。狐火、クロが何で人になったかわかるか?」
なんとなくではあるが、狐火が人になっているのと理由に差はないような気がする。元々がどちらも俺の装備だしな。何で意思を持ってるかはわからないが。他の人の装備も意思があるのだろうか?
「それはくろがつよくなったからなの! これはあるじさまがとくべつだからなの!!」
クロが強くなったから? ダンジョンコアを吸収したからか? そして俺が特別ってどういう意味なのだろうか?
「俺が特別ってどういう意味だ?」
「とくべつはとくべつだからなの!」
これ以上は教えてもらえなさそうだ。狐火はすっかりお口をチャックして黙り込んでいる。
「まぁ二人とも強くなってるならいいか」
「そうなの!!」
「なの」
グッジョブしている二人に思わずため息を吐きつつも笑顔になってしまう。なんかこいつら見てると安心するんだよな。
「っと、今何時だ!? あ! 学校に遅刻しちまう!!」
安心したところで時計を見ると、学校を出る時間の数分前だ。朝飯が食えないが、こればかりは仕方ない。ただこの二人の食事は――――。
「きつねびはたべなくてもだいじょうぶなの!」
「うん」
まぁ元が装備だし、大丈夫なのか? あれ、けど普段は油揚げとか食べてるよな?
「きつねびがたべてるのはれでぃのたしなみなの! だからだいじょうぶなの!」
よくわからないが、とりあえずいらないって事だな。よし、準備終わった! 出るぞ。
「知らない人が来ても開けるなよ! 仲良くするんだぞ!!」
階段を下りて慌てて飛び出、振り返ると、二人が窓から手を振ってくれた。俺も手を振り、走り出す。
ぶっちゃけ本気で走れば車より早く走れるが、そういう訳にはいかない。これじゃ人間やめちゃってる事になっちまうな。
走っている内に見覚えのある後ろ姿がいつもの場所で待っていた。
「わりぃ! 遅れ――――!?」
後ろ姿からでもわかる殺気。これは前方にいる真帆から発せられているのは間違いなかった。なぜ殺気が出ているかわからないが、何となく嫌な予感がした俺は、慌てて隠れる場所がないか周囲を見回す。だが、この周囲に逃げる場所はなかった。
そしてこちらを振り向いた真帆。満面の笑みでお出迎えをしてくれている筈が、その笑顔が笑っていない。笑顔なのに。そして幻覚なのか、真帆の後方に般若のような物が浮かんでいるように見える。スタ〇ドかな?
「しんちゃん、話があるんだけど」
「は、はい!」
これは逆らっちゃいけないやつだ。
手を掴まれると、そのまま俺は真帆に引きずられるように学校へ向かっていくのであった。
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死んだ筈の俺がダンジョン攻略させられてる件。しかもそれが配信されていて俺の刀がなぜかケモミミになってるんだが? ポンポン帝国 @rontao816
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