月と太陽

ミコトノリ812

月と太陽

いつも君を見ていた。


雨が降る午後3時。授業の終わりを鐘が告げる。


君を目で追いかける。


君は1人廊下に出て水を飲む。自分は見惚れてしまったせいなのか顔が熱い。

君はいつもどこかを見ている。


空を見たりしているが、何を見つめているのかはわからない。ゆっくりと流れる雲を見ているのか。それとも大きく雄大な山を見つめているのか。

またまた校庭の男子を見つめているのか。男子だったら少し嫌な感じになる。


でも何かわからない。

唯一わかったのは彼女は何か1つをじっと見つめている。


そんなこんなで学校が終わる。


ゆっくりと自分の家を目指す。

曲がり角の先で君を見つけた。家に帰るはずだが君がいるほうに行ってしまう、方向が全然違うのに。やっと近くまでこれたかと思ったが十字路で見失ってしまった。夜の曇に隠れてしまう月のように。


スッと消えてしまった。


昨日は夏になったかのような暑い日だったのだが、今日は雨がしとしとと降っている。雲が嫌いだ。きれいな月が少しも見えなくなってしまうからだ。救いは太陽がぼんやりと映してくれる。


太陽は月をいつでも映し出してくれる。

そんな太陽が好きだ、勿論月も好きだが。


そんなことを考えながら家に着く。

昔から住んでいるアパート。母や父と住んでいた家。

もう母や父は居らず、自分1人だけで住んでいる。

アルバイトを毎日して生計を立てている。だからケータイのようなものはない。

というか、友達と呼べる人がいない。

こんなこともできない自分が情けないと思う。


友達を一人もつくれず教室の端でいつも1人。


そんな時に君と目が合った。

あんな綺麗な瞳を見せられたら、好きにならない人はいないだろう。

でも君はクラスの女子の中心的な人物だからこんな自分とは釣り合うはずがない。


だからこんな自分を恨む。


夜8時に家を出る。

コンビニのアルバイトに行くのだ。

アルバイトリーダーが文句を言うから、アルバイトはそんなに好きではない。

レジで文句を言ってくる人もいる。

それもこんな自分だから仕方ないと思う。



======

深夜2時家に帰る。


今日は十数人くらいしか来なかった。

やはり雨だからだろうか。

外に出るとすっかり雨がやんでいた。


そんな時見えたのは1つの星と月だった。


月は輝いてる。

君のようだった。高嶺の花。

そんな感じ。


いつも反対にいるようなものだった。

まるで月と太陽のようだ。


いつも君と比較してしまう。悪い癖だ。

そうやっているうちに家に着く。


204号室に入る。現実に傷つく番号としていいのかもしれない。

4は現実的。2は傷付きやすい。0はそれを強調する。

だから現実に傷つく。


でもこんな自分にもいいと思うところもある。

その1つが自分の家は綺麗ということだ。


母に綺麗にすればココロも綺麗になると小学校のころから言われて育ったから毎日掃除をしている。


自分のココロも綺麗にできないものだろうか。


約1ヶ月経ったころ。

ご飯が終わったら君と少しだが目が合った。


琥珀にも負けない澄んだ瞳だった。


そんないい時間もすぐに終わってしまう。

君は廊下に出て行った。

今日は雲1つない日だった。

君は外を見ている。見つめている。


先は太陽だった。


自分は思った。

『自分と同じ所もあるかも』と。

いつも太陽はみんなを照らしてくれる。月が見れるのも太陽のおかげだ。

違うと思ったものも1つの関係があるのかもしれない。

たった1つの関係でもそれは重要なものなのかもしれない。

これは思い違いや、勘違いかもしれない。

が、自分はそう感じた。そう解釈した。


そんなこと考えつつ君を見ているとこちらを見てくれた。

自分は一礼する。すると君はニコッと笑ってくれた。

自分のほほが熱い。こんな自分にも笑ってくれた。

自分なんかにかかわってくれないと思っていた。

が、皆に優しいのだと気付かされた。やはり君は自分の初恋の人だ。

自分は君を見る人。君はみんなから注目される人。

そんな関係なのかもしれない。少し自分のココロの埃がとれた気がした。


そんな時。

こちらに来た君がつまずいてしまったのだ。


自分は驚く暇もなく飛び出す。

1瞬が遅く感じた。君とゆっくり手が近づく。


奇跡的に手を取ることに成功。


君の手は温かい。甘いシャンプーの香りも感じる。

最後の決め手は、真っ赤にしている乙女の顔。自分は立たせた後にすぐ手を外す。


「ありがとう」


君からの一言。ただそれだけ。

ただそれだけなのだが自分からみれば大きな1回だった。

そう。

こんな関係もいいのかもしれない。1瞬太陽と月が、変わった気がした。


この後に君を見るとニコッと微笑んでくれるようになった、周りの視線が少し痛いが。まぁ気持ちが楽になったように感じる。

君のおかげだろうか・・・。


この様に反対に見えるものも1つだけでもつながりがある。それはいいものなのかはわからない。


でもその『関係』を大切にしたほうがいいということは言える。





                                       END


==========

読んでいただきありがとうございます。


面白ければ★★★、面白くなければ★。


♡もつけていただけると幸いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

月と太陽 ミコトノリ812 @mikotonori812

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画