[アルネ戦記]その爵位、頂きます!

「・・・zMooooooooooo!!!」


 沼沢地に群がるマッドゴーレム、その数は約80体ほどだ。

 マッドゴーレムは泥で出来た身体なので一見すると強度は低く倒しやすいように思う。しかし実際は他のストーンゴーレムよりも素早く柔軟な動きを見せるので厄介だ。その理由は泥のお陰で関節の可動範囲が広いためだ。


 オマケに放って置くと分裂して更に増殖する危険もある。ザコと侮らずにさっさとカタづけるのが上々だ。



「よし、全員散開!足場に注意しながらマッドゴーレムを各個撃破だ!!」

「はいでありますっ!」

「ったく面倒臭いなぁ!」

「分かったのら!」

「合点だぜ!」


 俺の号令とともに散らばる仲間達。仲間とは言え女の手を借りるのは何とも申し訳ないが贅沢は言ってられん。

 思い直して愛用の細身の剣、レイピアを構える。群がるゴーレム達を前に息を整えて・・・突きを繰り出す!


「zMooo?」

「・・・bShuuuuu」

「bbbbbh・・・」


 一瞬で3体のゴーレムから生体反応が消える。全てのモンスターの動力源である魔石を無駄なく捉えた。俺の鬼功オルグだから出来る芸当だ。


 「鬼功(オルグ)」とは人体の生命エネルギーである「鬼力(きりょく)」を扱う術。鬼力は光・電・火・風・水・土の6種類の属性に分別され、それを元にした技術-鬼功オルグ-がある。


 俺の鬼功オルグの属性は「光」。イメージでは光線を出す攻撃だが今はレイピアの刃先にまとわせている。光線だけで泥のボディを貫通するのは多量の鬼力を必要とするからだ。


 それよりも刺突を素早くして一点集中させた方が少ない鬼力で戦える。光の属性は「粒子と波動」の性質を持っている。粒子はコーティングさせて刃先をよりシャープにするのに、そして波動は刺突の運動には最適だ。



 粗方倒した俺は仲間の方を見る。それぞれが苦戦している。


「くぅっ!魔石の場所が分からないです!オズマ!!」

「ソイツは口の下だ!」


 メンバーのドリカ、盾役を務めるリーダー格だ。生真面目な性格でこの4人をまとめ上げている。戦闘方法は電の鬼功オルグを扱う接近戦ながら着実かつ正確だ。



「ったく泥は重くて飛ばしにくいなぁ!」

「ヤケになるんじゃない、力を一点集中させるんだ!」


 リーケ、風の鬼功オルグを持つ彼女はパーティー内では斥候を勤める。能力は高いが如何せん面倒くさがりな性格なので大ざっぱなところが珠に瑕だ。



「あぐ・・・どんどんむかってくるのら~!」

「出し惜しみしないで思いっきりやれ!」


 涙声でゴーレムに対処しているのは水の鬼功オルグ使いの回復士マハテルト。楽天家の一方戦闘では臆病な面があるのでその高い実力を引き出し切れていない。



「はぁはぁ、なかなか燃えないぜ!」

「全部燃やそうとするな、外側を焼けば動きが鈍くなるハズだ!」


 後方支援のディアンタ、尊大な性格故使う火の鬼功オルグも派手なものばかり。ガス欠ならぬ鬼力切れになりやすいので監視が必要だ。


 以上の4人がパーティー「トゥルーフ」。女ながらハルナノ王国国防軍の選りすぐりの兵士で構成されている。全員が鬼功オルグを使える彼女達の協力を得られるのはありがたい。


 今の俺オズマ―羽石乙馬(はねいしおづま)―の立場は「勇者」。1年前に未発掘の遺跡で発見された。何でもデカイ遺物の中で眠っていたそうな。


 元々は違う国の人間だったが今はもう存在していないらしい。しかし過去の経緯はどうあれこのハルナノ王国に助けられた身分。その恩を返すべく王国のために働いている現状だ。


 最初は国防軍の兵隊として訓練を受けていたが、俺には鬼功オルグの才能があった事が発覚。以来「勇者」という遊撃隊として活躍する王命を受ける事に。


 その仕事内容は主にモンスター討伐だが小回りが利くので多岐にわたる。時には軍隊の一員として戦場に向かい、時には今日のような領地の一区画での問題に対処する。


 こうして連日こき使われていると正直「勇者」として祭り上げられるのも楽じゃない。しかしこの状況はチャンスでもある。


 請け負った仕事で報酬を貰い「勇者」としての特権を使い爵位・領地を得て安定した王国ライフを送ってやる!



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現在連載版を執筆中です。仕上がり次第連載致します。

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