第24話「一斗と二葉は」

「ただいまー」


 私、二葉は途中まで洸太くんと一緒に帰って来た。

 その洸太くんに告白された。どこかフワフワするというか、不思議な感じが抜けないと洸太くんに言うと、「俺も一緒だよ」と言ってくれた。そうか、私だけじゃないんだな。


「あ、おかえり、俺の方が早かったな」


 リビングに行くと、一斗がいた。お父さんとお母さんは仕事なのでいない。この家に二人ということで、私は今日の出来事を一斗に話すことにした。


「あ、一斗、ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど……」

「ん? ああ、俺も二葉に聞いてほしいことがある……」


 なるほど、一斗も一緒か……って、あれ? 一斗も? そういえばこの前もこんなことがあったような気がする。


「え、そうなんだね、じゃあ一斗から言っていいよ」

「い、いや、二葉からどうぞ……」

「あ、あれ? 簡単なことじゃないの? わ、私もちょっと恥ずかしいというか……」

「あ、じゃあ二人同時に言うってのはどうだ?」

「なるほど、じゃあそれでいこうか……せーので言い合おうね、言わないのはなしだよ」

「だ、大丈夫だよ、じゃあいくぞ、せーの」


「私、洸太くんに告白された」

「俺、新奈に告白された」


 ……あれ? 告白された? 私はそう言ったつもりだが、聞こえてきた言葉もそうだった。え、ということは一斗も?


「あ、あれ? 一斗も……?」

「あ、ああ……って、二葉も……?」


 そう言い合ってリビングがしーんとなってしまった。私はその静寂が耐えられなくなって笑ってしまった。


「な、なんだよ、そんなにおかしいか?」

「い、いや、ごめん、まさか一斗も告白されたなんて思わなくて……でもそっか、新奈が告白してきたんだね。返事はなんて言ったの?」

「まぁ、俺もいいなって思ってたから、お付き合いしてくださいって……二葉は?」

「わ、私もお付き合いしてくださいって……そっか、私たちついに彼氏と彼女ができたってことになるんだね」

「ああ、どうやらそうみたいだな、なんか不思議な気持ちだけど」

「あーわかる、私もなんか実感がないというか、どこかフワフワしてるよ」

「そっか、俺たちほんと似てるよな、これが双子ってことなのかな」


 私はソファーに座っていた一斗の横に座って、恥ずかしそうにしている一斗の頬をツンツンと突いた。


「なっ、お前、からかってるだろ……」

「そんなことないよー、一斗にいい人が出来て嬉しくてねー。あれ? そういえばさっき『新奈』って呼んでたような……」

「ああ!! よ、横溝さんが『新奈』って呼んでほしいって言ったから……」

「そっか、私は新奈って呼んでるけど、好きな人に呼ばれるときっと嬉しいと思うよ」

「そ、そっか、そんなもんなのかな……」

「そうだよー、今頃新奈は喜びすぎて飛び上がってるんじゃないかな」

「ああ、洸太も同じような感じになってそうだ」


 勝手に二人のことを想像した私たちは、同じように笑ってしまった。


「……でも、まさかこんなところまでシンクロしちゃうなんてねぇ、双子とはいえできすぎのような……?」

「まぁそうだな、きっと神様が見てるんだよ、一斗と二葉は頑張ってるから、ごほうびをあげようって」

「お、なんか一斗がめずらしいこと言うねぇ。でもそうかもしれないね」

「神様のごほうびだ、ありがたく受け取っておくことにしよう……そういえば二葉は『シンクロニシティ』って言葉知ってるか?」

「ん? 聞いたことあるような、ないような……」

「ある心理学者が提唱した概念らしいんだけど、『意味のある偶然の一致』ということらしい。まぁ本当の意味とはちょっと違うかもしれないけど、俺たちにぴったりかもな」

「なるほどー、うんうん、なんかぴったりだね、覚えておこう」


 そうか、意味のある偶然の一致……か。今回の告白に限らず、思い当たる節がいくつもある。私たちはそういうものなのかもしれない。


「あ、偶然では片付けられない出来事があった、まだテスト期間中だった……」

「あー! 明日英語があるよね? ヤバい、赤点とったらどうしよう……」

「おいおい、そんなにヤバいのか、俺が教えてあげるよ」

「た、たぶんそこまではならないはずなんだけど、なんか自信なくて……一斗は今日の数学どうだった?」

「うーん、たぶん赤点ではないと思うけど、そんなにいい点数でもないと思う……」

「そっかー、またお姉ちゃんが教えてあげようではないか!」

「な、なんかこういう時になるとお姉ちゃんであることを押してきやがるな……まぁいいか、じゃあ英語の勉強しておくか」


 私たちは私の部屋に行って、一緒に勉強をすることにした。

 

 一斗と二葉、一と二は、これからもシンクロしていくのかもしれない。




----------


作者のりおんです。

これで、この物語は終わります。

一斗くんと二葉ちゃん、二人はこれからもシンクロしながら、同じように成長していくと思います。

ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございました。

これからも、私の物語をどうぞよろしくお願いします。


2024年2月21日 りおん

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一と二のシンクロニシティ りおん @rion96194

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