死せる感情から始まる前世からの恋
霜花 桔梗
第1話 ローズマリーの香り
私は国道の上にかかる歩道橋の上にいた。ここから飛び降りたら、自由になれる気がした。
その想いは死に一直線であった。ありきたりで同じ毎日に飽きあきしていた。
高校での生活は生徒が腫物みたいに扱われて。先生は子供のご機嫌取りが仕事になっていた。親は一人で近所のコンビニにも行けないほどの心配性である。
社会全体が過保護であった。
夕空が綺麗で、今日も手すりを超えて天国に行けない自分が不愉快だと思う。
そう、死にきれないのであった。
翌日のホームルームで担任が化学準備室の清掃を言い出す。
「内申やるから誰かいないか?」
しかし、誰も手を上げない。今時は簡単な部活で十分に内申が上がるのであった。
ふ~う、毒でも有るかな……。
歩道橋から飛び降りるより楽に死ねそうだ。私は静かに手を上げる。
なんだ、この冷たい視線はまるで私が裏切り者であるかの雰囲気だ。
これが今の子供の世界の現実である。
放課後、化学準備室に着くと、隣のクラスの男子が一緒に清掃するらしい。
「お、俺、『田中川 鉄雄』お前、娼婦の臭いがするな」
何だ!この男子は失礼な。確かに夏はデニムのセクシー短パンを履くが、それと娼婦は関係ない。
「私は『沢谷 美々』です!」
私はカリカリした気分になるが、そこはもう大人になろうと冷静さを求める。
とにかく、清掃だ。私はモップで床を拭いていると、ゴミ箱の隣に小さな小瓶を見つける。ラベルにはローズマリーと書いてある。
アロマに使う香料か?
私は不用心に小瓶のふたを開ける。う~ん。眠くなる香だ。
そう、私は意識を失い倒れ込むのであった。
……―――。
「姫様、姫様……」
「うんん……もう少し……え?姫様?」
私が目覚めたのは豪華な部屋の中であった。
「起きましたか、姫様……」
見慣れないメイド服の大人の女性が声をかけてくる。
えええええ!!!
「ここ何処?」
そう私は異世界に迷い込んだのだ。
その後はドレスに着替えて、朝食である。朝からこんな豪勢なご飯を食べて良いのだろうか?
しかし、広い部屋に一人きりであった。
この鈴はメイドのテレサさんを呼ぶ為のものだったかな。あれ?何で初対面のはずのメイドの名前が解かるのだ?デジャヴでもないし、どちらかと言うと前世の記憶だ。
とにかく、鈴を鳴らしてみる事にした。
『チリン、チリン』
すると後ろのドアが静かに開きテレサさんが入ってくる。
「姫様、お呼びですか?」
「私の両親は?朝食を一緒に食べないの?」
「はて?姫様は政略結婚が嫌で嫌っていたはず」
思い出した!!!
私は政略結婚が嫌で自殺したのだ。そして、現代に転生して普通の女子高生をしていたのだ。
食後、一国の姫様なのでダラダラしていいかと思っていたら。外国語の勉強が待っていた。仕方なく、書斎に向かう。
そこに居たのは『田中川 鉄雄』であった。
「姫様、私の顔に何か付いているのですか?」
「いや、知り合いに似ていたから……鉄雄さんですね?」
「はい?俺の名前は『テツ』ですけど」
ま、細かい事は気にするのは止そう。しかし、改めて見るとカッコいいな。私の胸が高鳴ると。テツは壁ドンをしてくる。
「俺の外国語の授業受けたいよな」
その言葉にキュンとする。
ああああ、これは恋だ。
「は、はい、受けたいです」
しかし、この外国語の授業は政略結婚の為である。複雑な思いをしながらテツの授業を受けるのであった。
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