第5話 それから
すると、テツだけが苦しみだす。どうやら、毒の入ったお茶はテツだけが飲んだらしい。
「何故?」
「私は姫様を甘やかし過ぎました。それに今の姫様は凛としている。決して自殺などしない人の目です」
「嫌です、テツは私の心の支えになっていました」
「大丈夫、これは夢物語の世界です。私が死んでも大切な人は健在のはず。さあ、現実の世界に戻るといい」
テツは知っていた、私が異世界の未来からの住人であることを。
そして、テツが静かに息を引き取ると、トボトボと自室に戻る。
結局、心中のミッションは失敗だ。私はベッドに横になるとローズマリーの小瓶のふたを開ける。辺りが暗くなり現代に戻る気がした。
私が目覚めると化学準備室であった。
「リーア、心中は失敗したわ。鉄雄を殺すの?」
フードの少女のリーアは首を横に振った。
「残念、私の読み違いよ、あなたにもこの鉄雄にも、世界の理を満たすエネルギーが足りなかったわ」
「それはどうゆうこと?」
「簡単に言えば役不足、どちらかが死んでも世界の理は回らない。たから、新たな候補を探すわ」
は?
そう言うとリーアは鉄雄にかけた術を解く。鉄雄は静かに床に降りると眠っている様子であった。
「コラ!!!読み違えで済む話か!!!」
私の抗議にリーアは微笑んで消えていく。まったく、とんでもない時空の覇者だ。
すると、鉄雄が目を開ける。
「姫様、俺、前世の記憶がよみがえった」
「夢物語の世界でのテツの記憶が?」
「そうだ」
そっと、手が触れ合うと、あの優しいテツそのものであった。
ラブストーリーは始まったばかりだ。
死せる感情から始まる前世からの恋 霜花 桔梗 @myosotis2
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