スライムのお嫁さんとの部員集め



 結局その後は下校時間の関係で、すぐにお開きになってしまった。

 次の日のお昼休みにまた集まる事を約束して、それぞれ帰路へ着く。

 帰り道、アドラ先輩と別れた後でアノマに詳しく話を聞いてみると、あの時プルルが協力してくれるであろう事も含めて作戦の一つだったらしい。


「申請して新しく部を創るより、既にある部を乗っ取った方が早いし簡単だろう?顧問を探す手間も省ける」

「いや、そうかもしれないけど……てっきり、アドラ先輩を追い出すんじゃないかと思ってたよ」

「バカを言うな、生き物好きの貴重な人材なんだぞ。それに私はあの時『生物部』を明け渡せと言ったのだ。ここから出ていけだの、部室を明け渡せ等と言った覚えはない」

「弱った生き物を保護していたり……アドラ様は、とっても優しそうな方でしたね!また明日お会いするのが楽しみです。もちろん、アノマ様もとっても素敵な方だと思います!」

「ふふっ、褒めてもスカイフィッシュくらいしか出ないぞ。……さて、では私はこの辺りで失礼する。また明日、生物部の部室で会おう……遅れるなよ?」

「うん、明日はちゃんと弁当を持って行くよ」

「アノマ様!また明日お会いしましょう!」



 そう言って僕達は、それぞれの家路に着いた。

 そして僕達はお婆ちゃんの待つ家の玄関を開けて、プルルとの初の学校生活を無事に終わらせる事が出来たんだ。




 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




 次の日のお昼休み。


 生物部の部室に集まった僕らは、お昼ごはんを食べる為に机周りを軽く片付けてから、各々の席に座った。

 ちなみにプルルには僕の魔力を手に込めながらプルルの身体を撫でる事で、ちょっとしたごはんの代わりとしている。

 こうしてるだけでも、体表から魔力を摂取できるみたいだ。


「あぁ、ミュカ様から溢れるモノが、私のナカに入ってきてます……」

「うん、僕の魔力の事ね。今すぐ止めようか、その言い方は」


 なんやかんやあったものの、ある程度食事が済んだところでアノマが立ち上がり、これからの生物部として活動する魔物研究会についての説明を始めた。

 最初は頭に?マークだったアドラ先輩も、説明を聞いていくにつれて目を輝かせていった。


「生き物としての魔物の観察、生態の解明……!すごく面白そうなテーマだと思う……!俺も……仲間に……入れてほしい……!」

「もちろんだとも、メンバーは多いに越した事はない。それに、生き物の知識に明るいアドラ先輩がいたら、魔物研究会として心強い」

「そ……そうかぁ……?俺、顔も身体も厳ついし……図体のくせにノロマだから……そんな事言われたの……初めてだぁ……!」


 よかった、アドラ先輩も生き物にまた関われて嬉しそうだ。


「さて、これから生物部兼魔物研究会として活動を始めていく訳だが……その為に、どうしても片付けなければならない問題が、一つある」


 部室にいる全員がアノマに注目する。


「……部員が、足らない」




「……なるほど。結局その魔物研究会とやらは、表向きは生物部として活動する事になったと」

「うん……と言っても、人数不足で廃部間近の崖っぷちなんだけどね」


 お昼休みが終わった後の授業の休憩時間に、僕は親友のオルカに部員の事を相談していた。

 何でも、生物部は部員が足りなかった期間が長かった為に、残り一週間以内に部員の数が五人に届かなかった場合は、廃部か同好会にランクダウンしてしまうそうだ。

 アノマ曰く、部費が支給されなくなる以上は同好会へのランクダウンも避けたいと力説していた。


「んで?今は何人集まってる訳よ?」

「僕とアノマとアドラ先輩かな。プルルはカウントされないだろうし……」

「わ、私が人型になればどうでしょうか?!ほら!これなら、あと一人です!」


 プルルが人型形態になって、ポーズをとってアピールしてくる。

 うん。可愛い。


「いや、この学校の生徒じゃないとイカンだろうよ」

「そ、そんな!」


 ガーンと書かれてそうな表情と共に、プルルは机にベショリと倒れ込んでヘニョヘニョになってしまった。

 うーん、これはこれで可愛い。


「それなら、俺が入れば残りは一人だな」

「……えっ?!オルカ、良いの?!」

「普段ミュカには散々世話になってるからな。幽霊部員でも良ければ、このオルカ・オシナース、生物部に入っても問題ないぜ」

「オルカ……ホントにありがとう!」


 よし!これで部員はあと一人!希望が見えてきた!


「でも、あと一人をどうするか……やっぱり、チラシを作って募集とかかな?」

「いやいや、もう一人候補いるだろ?お前と仲が良くて、どこにも所属してない、お前の事が大ー好きな……」



『ミューーーーカーーーー!!!』



「あ、この声って……」

「そら、来たぞ。プルルちゃん、ちょっとこっちに避難してな」

「うぇ?は、はい……」


『ミュカミュカミュカミュカミュカ……ミュカー!』


 そんな大声と共にバーン!と開かれる教室の扉。


「ミュカー!久しぶりだねミュカ!やっと会えたね!」

「そうだったね。久しぶりだね、メぐふぅっ!」


 は、早すぎる……!気付いたらタックルで突っ込まれていた!


「ミュカー!今週ぜんぜん会えてなかったから寂しかったよー!もっとギューってさせて!もっとスリスリさせて!もっとミュカニウムを補充させてー!」

「わ、わかったから!メグ、ちょっと離れて……く、くるしい……」


 お、溺れる……胸元のふかふか暴力で溺れる……!



「……ぷはぁ!た、助かった……」

「いや、何一つ助かってねぇよ、この鈍感大馬鹿野郎」

「な、何してるんですかー!」


 プルルが間に入ってくれたお陰で、彼女のぱふぱふ領域から抜け出す事が出来た。

 しかし、今度はプルルが彼女と向かい合っている。


「いきなり何なんですか貴方は!突然ミュカ様に抱きついたりして!」

「んー?そう言う貴方ははじめましてだね!」


「私はメグ・アロトドゥス!ミュカの幼馴染で、未来のお嫁さんだよ!」

「な、何ですってー!?」

「んで?君は?」

「わ、私はプルル!スライムで、ミュカ様のお嫁さんです!」

「………………なんだってー!?」



 あ、これ……どうしよう?

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スライムの恩返し 〜スライム助けたらチート級に可愛いお嫁さんになって毎日愛される幸せな日々〜 なんちゃってアルゴン @nantyattearugon

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