第15話 マージナルマン
イサムと別れ、数分がたった。モトさんの見立てが正しければ、今ヤトという超能力者が、この校舎内にいる。イサムであれば、超能力での戦闘が可能だ。だがもし俺がエンカウントしてしまったら…。
その時は腹を括るしかない。
俺の能力があれば、死の間際であろうと敵の情報をカメラに残すことができる。いざとなったらイサムかモトさんに託そう。とはいえ死にたいわけでもない。俺にできることを頑張るんだ。
怖気づく自分の足を叩き前へと走り出した。廊下の隅にあったバケツをぶっ叩き、できるだけ大きな音を廊下いっぱいに響かせた。
「こっちだバカ宇宙人!」
宇宙人がこちらに気づいた。ウニャウニャと口のようなものを動かしてこちらめがけ走ってきた。今ならわかる、こいつの意思が燃える炎のように立ち上っていることに。
俺は精一杯の力を振り絞ってグラウンドへ出ることにした。宇宙人は2、3メートルくらいで廊下のものを破壊しながらこちらへ向かってくる。
できるだけ時間を稼ごう。そして、この瞬間を撮り続けてやる…!
松田くん、竹内くん、梅谷さん、三人とも無事だろうか。まさか、敵の中にもう一人超能力者が関わっているとは…気づけなかった私のミスだ。大人として彼らを守らないといけないのに…
私は両頬をパチンと弾いた。
いや、ちがう。彼らなら大丈夫だ。多分彼らならみんなにも会わせられる。彼らを信じろ、
そう自分自身に言い聞かせ、目的地へと急ぐ。この事件の首謀者の元へ。
「まさか本当に七不思議を解決して辿り着けるとは思わなかったよ。」
禍島神社の
「お前だろ、ほんとうのヤト。いや、ヤトノカミ。」
すると御社の中の鏡が揺れ始め、ついには落ちて粉々になってしまった。次の瞬間、御社からヘビのような巨大な生物がとびだし、こちらを睨んできた。
「クソ人間が、己はまだ起きる時間じゃないんだよぉ…!!ぶっ殺してやるよぉ!!!」
鼓膜を突き破るような爆音で唸りを上げる。
「巨大なヘビ型のUMAとは以前一度戦ったことがあるんだ。かかってこい。」
「私、そばにいたいよ…」
梅谷会員はそう言って泣き崩れてしまった。
「大丈夫だ!私たちが一緒だぞ。」私が駆け寄って彼女の肩を抱いた、その瞬間、
「おい、ユイちゃんから離れろ、下衆が。」
どこからともなく男の声が聞こえた。だいぶ若い。ついに現れたか…。これが恐らくヤトという超能力者だろう。
廃ホテルに藤島や私達を誘い込み、巨大な境界に私達を引きずり込み、そして、梅谷会員を唆し、死に至らしめようとしていた男…!
「その声…まさか…」梅谷会員が何かに気づいたようだ。
「…カズキ、くん…?」
突然目の前に、少年が現れた。
「ああ…僕は壬生一基、ユイちゃんを救うのは僕だ!!ユイちゃんを傷つけるやつは僕が全員殺す!!」
梅谷会員の傍に落ちたお守りから溢れんばかりのオーラが満ちている。おそらくこれだ。梅谷会員はこれに触発されて莫大な意思の力を手に入れたんだ。
私は無性に腹が立ってきた。僕が救うだと?君は梅谷会員を死の寸前までおいやって、多くの人を無茶苦茶に傷つけただけじゃないか…!
怒りが私の意思を強くするのを感じる。
「ふざけるなッ!!!」
少年は、こちらに向かって走ってきた私はすかさず身の回りの物をポルターガイストさせ、構えた。
しかし少年は少し口角を上げてなにか唱えた。
『
しかし次の一瞬私の構えていた腕は突然動かなくなってしまった。
「クソっなんだ、君は!!」
「お前のような下衆に応える義理はねぇよ!!」
カタリ・カタリ サネユキ @saneyuki0
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